【8月15日 AFP】ボスニア・ヘルツェゴビナで先週、男がパートナーの女性を殺害する様子をインスタグラム(Instagram)で生配信する事件が起きた。事件を受け首都サラエボなどでは14日、抗議活動が行われ、数千人が参加した。

 北東部の町グラダチャツ(Gradacac)で11日、プロのボディービルダーでフィットネス・インストラクターのネルミン・スレイマノビッチ(Nermin Sulejmanovic)容疑者(35)が、パートナーの女性(37)を殴打し、銃で殺害した。その後さらに2人を殺害し、自殺した。

 同容疑者は犯行をインスタグラムで生配信していた。現地メディアによると、数千人が視聴し、中には容疑者をけしかけるようなコメントを投稿した人もいた。

 殺害された女性は、スレイマノビッチ容疑者から暴力を受けたため、事件の数日前から生後9か月の子どもと共にいとこの家に避難していた。だが2人とも犯行前に無理やり連れ戻されたという。

 スレイマノビッチ容疑者は知人男性とその息子も殺害。さらに別の女性1人と男性2人を負傷させた。うち1人は警察官だった。

 サラエボで14日に行われた抗議デモでは、ベンヤミナ・カリッチ(Benjamina Karic)市長が演説。フェミサイド(女性を標的とした殺人)とドメスティックバイオレンス(DV)に対する罰則の強化や、暴力を受けている女性向けの避難施設の増設を訴えた。また被害者には被害届を出すよう促した。

 カリッチ氏は「適切な対策を導入する最後のチャンスだ。責任ある立場にいながら現状を容認する人間は暴力の共犯者となる」と述べた。

 デモ参加者は「フェミサイドを止めろ」「暴力にノー」「沈黙は共犯」などと書かれたプラカードを掲げた。

 一方、事件が起こったグラダチャツでは、殺害された女性の葬儀後にデモが行われた。

 欧州安全保障協力機構(OSCE)が実施した2018年の調査によると、人口350万人のボスニア・ヘルツェゴビナでは、15歳以上の女性の48%が何らかの形の暴力を男性から受けたことがある。(c)AFP