【7月18日 AFP】欧州連合(EU)の最貧国ブルガリアが、EU内で最も高いポールに国旗を掲揚し、歓声と嘲笑の両方を浴びている。

 ブルガリア南部ロドピ(Rhodope)山脈にあるロジェン(Rozhen)村に掲げられたのは、11万1000平方キロの国土を象徴する1110平方メートルの巨大な国旗。ポールの高さは111メートルで、これまでEU圏内で最高だったフィンランドの100メートルを超えた。

■賛否両論

 この牧草地では毎年、伝統的な祭りが開催されており、今年は3日間の行事に先立ち、国旗掲揚ポールの設置を祝う式典が行われた。

 祭りの主催者シメオン・カラコレフ氏(45)は、親ロシア派のルメン・ラデフ(Rumen Radev)大統領も支持した国旗掲揚ポールのための募金で50万ユーロ(約7800万円)を集めた。「これでブルガリア人が裕福になるわけではないが、皆の気分を高揚させてくれる」

 式では掲揚される前の巨大国旗に触ろうと、民族衣装を着た老若男女数千人が集まった。ラデフ大統領はカラコレフ氏と共に「ブルガリア万歳!」と声を上げた。

 だが、国旗掲揚ポールの募金運動はソーシャルメディア上で広く嘲笑され、ポールの上で揺れる大統領を描いたミームも拡散した。

 政治学者のオグニャン・ミンチェフ(Ognyan Minchev)氏は「旗ざおの高さで国家の誇りを測る指導者たち、ロシアのプロパガンダに支配された疑似国家主義者たち」に愛国心が乗っ取られてしまったと嘆いた。

 手つかずの自然が残る草原に土台のためのコンクリートが打たれ、その許可に不正疑惑も浮上したことで、環境保護団体の抗議に火が付き、計画中止を求める嘆願書には数千人の署名が集まった。

 近隣の町に住むビジネスコンサルタントの女性(38)は「この棒が森の中にある草原から突き出ているのを見て、気分が悪くなった。自然に対する人間の干渉だ」とAFPに語った。

 日が暮れると、国旗掲揚を待つ人々の歓声の中、無数の携帯電話のライトが夜空を照らした。しかし、いざその瞬間が訪れると風は吹かず、旗は垂れ下がったままだった。(c)AFP