【6月9日 AFP】シモーネ・バイルス(Simone Biles)選手やアレクサンドラ・レイズマン(Alexandra Raisman)元選手ら米国体操女子の性的虐待被害者90人以上が8日、ラリー・ナサール(Larry Nassar)受刑者(58)の捜査対応を誤ったとして、米連邦捜査局(FBI)に10億ドル(約1340億円)の賠償を求める訴えを起こした。担当法律事務所が明かした。

 米国体操連盟(USA Gymnastics)のチーム医師だったナサール受刑者は、連盟やミシガン州立大学(Michigan State University)で20年以上にわたり勤務していた際、女子選手らに性的暴行を加えていた。2017年から18年に行われた裁判で有罪を認め、現在は終身刑に服している。

 被害を訴えた女性の数は数百人に上り、バイルス選手をはじめ元選手のレイズマン氏やマッケイラ・マロニー(McKayla Maroney)氏ら五輪金メダリストも含まれる。

 マロニー氏は「サバイバー(性暴力被害者)の仲間と私は、米国オリンピック委員会(USOC)、米国体操連盟、FBI、そして米司法省といった、私たちを守るべき全ての機関に裏切られた」と主張。「彼らが約束を守り、FBIに責任を取らせることを少し期待していた」とし、「法的手続きが正義と回復につながる唯一の道であることは明らか」とコメントを発表した。

 担当法律事務所は、FBIは2015年7月の段階で信頼できる訴えを受け、「ナサール受刑者の犯行を即座に止めることができる」状況だったと指摘。「それにもかかわらず、FBIは虐待について話そうとしていた選手との面会を拒否し、責任を甚だしく放棄した」と主張している。

 米国体操連盟は昨年、ナサール受刑者の被害者に対し、性的虐待の被害者が受け取る和解金としては過去最高レベルの総額3億8000万ドル(約510億円)を支払うことで和解した。また、ミシガン州立大学も2018年、和解金5億ドル(約671億円)を支払うことで合意している。(c)AFP/Chris Lefkow