【5月13日 AFP】米フロリダ大学(University of Florida)の研究チームは12日、アポロ(Apollo)計画で月から持ち帰った砂で植物の栽培に初めて成功したとする実験結果を、科学誌コミュニケーションズ・バイオロジー(Communications Biology)で発表した。

 研究チームは、アポロ11号、12号、17号が月の複数の場所から採取した、「レゴリス」と呼ばれる砂計12グラムを使用。約1グラムずつ指ぬき程度の大きさの容器に入れ、水を加えて種をまき、養液を毎日与えた。

 栽培する植物にはシロイヌナズナが選ばれた。カラシナの仲間で育てるのが容易。最も重要なのは、これまで広く研究に使われてきた点にある。遺伝子情報が解析されており、宇宙を含む厳しい環境への適応能力があることでも知られる。

 対照実験のため、地球上で採取された砂と、月と火星の砂を模したサンプルも用意された。種をまいてから2日後、月の砂を含むすべての容器から発芽した。

 論文の筆頭執筆者、アンナリサ・ポール(Anna-Lisa Paul)氏は「月の砂でも対照群でも、生育状況は6日目くらいまでは同じだった」と述べた。

 しかし、その後、違いが現れ始めた。月の砂では成長は緩やかで、根も途中で伸びるのをやめた。

 20日後にすべての容器からシロイヌナズナを採取し、DNAを調べた。その結果、月の砂で育った個体は、過度の塩分や重金属を含んだ土壌など、過酷な環境の下で育った植物と似た反応を示していたことが明らかになった。

 米航空宇宙局(NASA)のビル・ネルソン(Bill Nelson)長官は実験結果について「長期的な有人探査計画の目標達成に向け極めて重要だ」と指摘。「将来、宇宙飛行士が深宇宙で生活し、活動するため、月や火星で見つかった資源を活用して食料源を開発する必要がある」と語った。

 研究チームは今後、月の砂を植物の成長により適したものに改良する方法を研究したいとしている。(c)AFP