【12月30日 AFP】若くして北朝鮮の最高権力を継承してから10年。金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong Un)氏は今や、世界的にも経験豊富な指導者の一人だ。そしてこれからの数十年、核兵器を盾に欧米諸国に挑発的な態度を取り続けるはずだと専門家はみている。

 まだ30代後半の金氏は今年1月、朝鮮労働党(Workers' Party)の総書記に就任した。ほとんどの国家元首とは異なり、選挙や任期、年齢の心配はない。健康が許す限り数十年にわたって君臨していくと思われる。

 金氏の最初の10年は、国際的な孤立に始まり核開発へ、そして世界で最も影響力を持つ指導者らと共に外交の舞台に立つまでに至る軌跡を描いているとアナリストは言う。

「北朝鮮は米国との対立的な立場を崩さず、挑発的な駆け引きを仕掛けて米国を悩ませるだろう」とAFPに語るのは韓国の政府系シンクタンク、韓国統一研究院(Korea Institute for National Unification)の北朝鮮問題専門家、金●何(●はかねへんに眞、キム・ジンハ、Kim Jin-ha)氏だ。「それでも、一線を越えて両国の関係が完全に決裂することがないように気を付けるはずだ」

 金氏は、2011年12月17日に死去した父、金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong Il)総書記の実権を継承した。その後6年以上は、世界から孤立している自国を離れることも、外国の元首と会談することもなかった。

■粛清と暗殺

 当初は金氏を、朝鮮人民軍の将軍や労働党幹部が操る名ばかりの元首とみる向きもあった。しかし、2013年に義理の叔父、張成沢(チャン・ソンテク、Jang Song Thaek)氏を反逆罪で処刑するなど、残忍な方法で自らの権威を確立した。

 2017年にはマレーシア・クアラルンプールの空港で、異母兄の金正男(キム・ジョンナム、Kim Jong Nam)氏が神経剤で暗殺され、これについても金氏の関与が疑われている。

■核兵器開発

 その間、金氏は国連安保理(UN Security Council)決議で禁止された核兵器開発を加速させた。北朝鮮による6回の核実験のうち、4回は金氏の政権下で行われた。2017年には米本土が射程に入る弾道ミサイルの発射テストを何度も実施。国連安保理の制裁強化に対抗した。

 年初に米大統領に就任したドナルド・トランプ(Donald Trump)氏と数か月にわたって激しい舌戦を繰り広げ、朝鮮半島での武力衝突の不安が高まった。その後、金氏は自国の核戦力が「完成した」と世界に宣言した。