■テスラ「100台」分の電力

 ヤラ・ビルケランの船内には、従来の機関室に代わり8個の蓄電池コンパートメントが設置されており、6.8メガワット時の電力を貯蔵できる。再生可能エネルギーである水力を使って発電する。

 ブラーテン氏は、米国の電気自動車(EV)と比較して「テスラ(Tesla)100台分に相当します」と述べた。

 国際海運によって排出される人為的な温室効果ガスは全体のほぼ3%を占め、業界は排出量の削減目標を2030年までに40%、2050年までに50%としている。

 だが近年、排出量は逆に増加している。国際海事機関(International Maritime Organization)の最新統計によると、国際海運の温室効果ガス排出量は2012年には9億6200万トンだったが、2018年には10億トンを超えた。

 専門家は、電動船がすぐに万能の解決策になることは期待していない。米ボストンコンサルティンググループ(Boston Consulting Group)の海上輸送専門家、カミーユ・エグロフ(Camille Egloff)氏は「電動船は『ニッチな』用途、例えばフェリーのように短距離で一定している航路、沿岸や河川の輸送には適しているでしょう。しかし、長い航海には不向きです」と指摘する。

「長距離でも自律航行を可能にする必要がある上、港に充電設備も必要です。調整すべき技術上、インフラ上の課題があります」

 石油と天然ガスの生産大国であるノルウェーは、意外にも電気輸送で世界をリードしており、すでにたくさんの電動フェリーが国内のフィヨルドを行き交っている。さらに外洋航路船も「グリーン化」するためには、液化天然ガス(LNG)や合成メタノール、水素など他の技術に頼る必要がありそうだ。

 映像は11月19日撮影。(c)AFP/Pierre-Henry DESHAYES