■実は古典的な現象?

 精霊を信じる人々はここで水死者や、マリでは珍しい自殺者が出るのは、精霊がいる「証拠」だと口々に言う。橋の近くで起きる交通事故も同様だ。

 海の精セイレーン(siren)を見たと話す人もいれば、昔ここで水没した村の話や、精霊が巨大な手でバイクごと人を水に引きずり込んでいくという話をする人もいる。

「単なる迷信です。中国企業が橋を建設した際に真相が明らかになりました」と言うのは、バマコにある孔子研究所(Confucius Institute)の所長、ベルコ・ウールグエム(Belco Ouologem)氏だ。同氏は中国葛洲ダムグループ会社(CGGC)が橋を建造した時に通訳を務めた。

「ロボット装置で川の中を調査した結果、地下水面につながる大きな穴があることが分かりました。その穴によって渦ができ、水中に落ちたものが吸い込まれるのです」。同氏は「古典的な現象だ」と説明した。

 橋の建設中には、この場所の地質を説明する大きな看板が立てられた。だが、隔週でいけにえをささげに来る男性は、「理屈ではありません。そういうようになっているのです」と話した。「あまり刺激してはいけません。精霊が怒ってしまいます」 (c)AFP/Amaury HAUCHARD