■「より良い暮らし」

 米国への旅で最悪だったのは、メキシコ国境近くで他の移民と一緒に12時間、トレーラーの中に詰め込まれたときだ。「暑くて、みんな気絶し始めました」。オスカル君も気を失ったが、誰かが水をくれたおかげで助かった。

 旅の途上で一人、友達ができたのは良い思い出だが、今では行方が分からない。「あきらめちゃダメだ、神様のご慈悲とともにやり遂げようって言ってくれました。あっち(米国)ではより良い暮らしがあるんだって」

 米国では「勉強することができる。ママを連れてくる方法を学ぶんだ」とオスカル君は言った。

 AFPは3月27日の夜、正規の書類を持たない70人以上の移民がリオグランデ川を渡り、ここテキサス州ローマ(Roma)に次々と到着したのを目撃した。ほとんどがグアテマラかホンジュラスから来た移民で、2人だけルーマニア出身だった。そのうちの二十数人が同伴者のいない子どもや思春期の少年少女で、最年少は7歳だった。

 移民らは到着後、やぶに囲まれた砂地の道を1キロ以上歩き、待ち受けていた国境警備隊員に身を預けた。

 この小道には、移民らが落としたり捨てたりしていった、それまでの暮らしがしのばれる品々が散乱していた。例えば、川を渡る際に密入国業者に与えられた身元識別用のプラスチック製ブレスレット、靴の片方、ウエットパンツ、赤ん坊のがらがら、ホンジュラスの紙幣などだ。

 当局は、未成年者については家族と再会できるよう尽力する。難民申請のための聴取を待つことになる家族もいれば、国外退去を迫られる家族もいる。

 単身で到着した成人はすべて国外退去処分になると、米政府は告げている。時に入国者が一晩で数百人に上ることもある。こうした光景は地元の住民にとって日常茶飯事だという。

 共和党のドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領は、全長約3200キロのメキシコ国境を封鎖しようとした。同党は、民主党のバイデン現大統領が政策転換したために移民の殺到を招いていると非難している。