■「中指を立てられるだろうか?」

 艾氏はかつて、中国当局からもてはやされた。2008年の北京五輪で、メイン会場となったスタジアム「鳥の巣(Bird's Nest)」の設計にも携わった。

 だが、8万7000人以上の死者を出した08年の四川大地震で当局の対応を批判したことで、中国政府の怒りを買った。11年には81日間拘束され、4年後にドイツに渡った。

 艾氏は、26年前の1995年に天安門広場で撮影した写真が再び中国当局を刺激しているという事実を歓迎している。「誇りに思う気持ちは否定できない」

 この写真は「Study of Perspective(遠近法の研究)」シリーズの発端となったもので、艾氏は米ホワイトハウス(White House)など100か所以上で中指を立てた写真を撮っている。

 天安門広場で中指を立てたジェスチャーに中国当局が今も激怒していることこそ重要だと艾氏は言う。「個人のちょっとしたしぐさが国家の問題となり、権威主義の根幹を揺るがすことができる」

 また、艾氏は、フランスのポンピドーセンター(Pompidou Centre)や英国のテート・モダン(Tate Modern)など欧米の美術館が、中国本土で取引していることを批判した。

「多くの文化機関が中国に殺到しているが、芸術において最も重要で意味のある表現の自由を気にかけているのだろうか?」と疑問を投げかける。

 さらに艾氏は、「自分たちが喜ばせようとしている政府から、M+のようなプロフェッショナルな美術館が考えられないほどの圧力を受けているのを、黙って見ているのか」と続けた。

「彼らは、中指を立ててみせることができるだろうか」 (c)AFP/Jerome TAYLOR