【12月3日 AFP】20F1第15戦バーレーンGP(Bahrain Grand Prix 2020)決勝で、高速クラッシュによりマシンが炎上する大事故に遭ったものの、劇的な生還を果たしたハース(Haas F1 Team)のロマン・グロージャン(Romain Grosjean)が2日に退院し、「死を感じた」とAFPに語った。

 先月29日に行われたレースの1周目にアルファタウリ(AlphaTauri)のダニール・クビアト(Daniil Kvyat)と接触したグロージャンは、炎上するマシンからなんとか脱出。両手や左脚に軽いやけどを負っただけで済み、バーレーン国防軍病院で治療を受けた。

 グロージャンは「死を間近で感じた。あんなことは我慢がならないし、同じ人間でいられない」とコメントした。

 30秒近くマシンの中で身動きできなかったグロージャンだが、コックピットを囲む頭部保護装置「Halo」のおかげで命が助かった。

 34歳のグロージャンは、自身のF1キャリアで「最も激しいものではなかった」と語るクラッシュと、なんとか脱出し、軽傷で済んだその後の炎上について説明した。

 グロージャンは声を震わせながら、「シートベルトをすぐに外してマシンから降りようとしたが、ヘルメットが何かに当たっているのに気づいた」と話した。「座り直し、身動きが取れないから待とうと自分に言い聞かせた」

「けれど、左側が一面オレンジ色になっていて、燃えていることに気づいた。『待っている時間はない。右側から脱出しよう』と心の中で思ったが、できなかった。左側からも脱出できなかった」

「『こんな形では終われない。(死ぬのは)今じゃない』と思い、また脱出を試みたがやはりできなかった。だから座ったが、近くでというより間近で死を感じた」

 グロージャンはまた、マシンが炎に包まれている間に脱出するすべを見つけ出せたのは、3人の子どものことを考えていたからだと述べた。

「ブロックされた足を引き抜き、頭の向きを変え、立ち上がるために両手を上げることができた原動力はそれだった。燃えるだろうとわかってはいたが、大丈夫だった」

 医療センターに搬送された後、グロージャンはショックと痛みで震え始めたものの、「なじみの顔を見る」ことができ、妻でテレビ番組司会者のマリオン・ジョレス・グロージャン(Marion Jolles Grosjean)さんと言葉をかわしたという。

 グロージャンはさらに、辛うじて生還した今回の出来事から生じ得る精神面の問題に対処するため、現在かかりつけのスポーツ精神科医とカウンセリングを重ねているところだと明かした。(c)AFP