【6月12日 AFP】ヒトの幹細胞を用いて「青写真」段階にあるヒト胚のモデルを作製することに成功したとの研究結果が11日、発表された。胎児の発達初期段階に関する重要な知見を提供する可能性があるという。

 英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)とオランダ・ヒューブレヒト研究所(Hubrecht Institute)の研究チームによれば、今回開発したモデルを用いることで、これまで垣間見ることのできなかった人体形成の基礎過程を観察することが可能になるという。

 ボディプラン(Body Plan)として知られる人体構造の配置は、原腸形成として知られる過程を通じて行われる。この過程では、胚内に三つの異なる細胞層が形成される。これらの細胞層はその後、神経、筋骨格、消化管という人体の三つの主要な系統を発生させる。しかし、原腸形成は人体の発達における「ブラックボックス」期としても知られている。法的規制により、14日を超えて実験室内で胚を発達させる研究は禁止されているからだ。

 英科学誌ネイチャー(Nature)で論文を発表した研究チームによると、今回作製したモデルは受精18~21日後の胚に似ているという。これは原腸形成が起こるのとほぼ同じ時期にあたる。出生異常の多くが発生するのもこの時期だ。そのため、原腸形成に関する理解の向上は、不妊、流産、遺伝病などの問題を解明する助けになりうるとされた。

 研究チームは今回、「ガストロイド」として知られる3次元モデルを作製するため、ヒト細胞を密集した塊に集め、特定の遺伝子を活性化させる信号として機能する化学物質で処理した。チームによると、ヒト胚の3次元モデルを作製するためにヒト幹細胞が使用されたのは初めてだという。

 今回の手法をめぐり研究チームは、ガストロイドには脳細胞がなく、子宮内で着床するための組織も持っていないため、完全に形成された胎児に発育することは決してないと強調している。研究では、ガストロイドの発達を約72時間にわたり観察し、筋肉、骨、軟骨などの形成につながる事象の明らかな兆候を特定することができたという。(c)AFP/Patrick GALEY