■新たな戦略

 その一方で、新型コロナウイルスの流行により、暴力沙汰を伴った路上での集会に代わるものとして、民主派デモの支持者らはすでに検討されていた新たな戦術─労働者の示威行為─の感触を得た。

「完全自由市場」の殿堂である香港では、労働運動は無力で、香港最大の労働組合は頑強な親中派の第一線を張る。

 だが抗議デモで多くの人が逮捕されたことを受け、民主派の労働組合員数は急増。

 先月には、新たに結成された医療関係者の労組の組合員が多数、中国本土との境界の閉鎖を求めて1週間にわたりストライキを実施した。政府はその後、本土との境界をほぼ閉鎖したものの、示威行動に屈したとの見方については否定した。

 しかし、暴力沙汰が消え去ったからといって、中国政府が譲歩しようとしていることを示唆するものほとんどない。

 中国政府の香港政策を担当する香港マカオ事務弁公室(Hong Kong and Macau Office of the State Council)には、強硬派の当局者2人が配置された。うち一人は、中国本土におけるキリスト教取り締まりの急先鋒(せんぽう)として知られている。

 習近平(Xi Jinping)中国国家主席はまた、争点と化して抗議行動を招いた、愛国教育と扇動を取り締まる条例の香港への導入に対して支持を示唆。

 また専門家の多くは、新型ウイルスの流行が、最善のシナリオでは4月もしくは5月に抑え込まれると予想しており、そうなれば林鄭長官と中国政府にとっては一安心となる。

 だがそれは、ちょうど抗議運動が始まってから1年を迎える6月に合わせて、抗議活動を解き放つことにもなり得る。

 サムさんは、「一連の抗議デモが香港を根本的に変えてしまった」と指摘。「近いうちに消え去ってしまうことはない」と語った。(c)AFP/Jerome Taylor and Su Xinqi