【1月6日 AFP】ドイツの公共放送ARDが5日、重量挙げ競技の薬物違反をテーマにしたドキュメンタリー番組を放映し、国際ウエイトリフティング連盟(IWF)と長らくその会長を務めるタマス・アヤン(Tamas Ajan)氏が、数十年前からの「腐敗した文化」とドーピングの隠蔽(いんぺい)体質を生み出したと批判した。

 番組では、ロシアの国家ぐるみのドーピングを暴いたハイオ・ゼッペルト(Hajo Seppelt)氏をはじめとする記者陣が、有名選手がほとんどドーピング検査対象にならない実態と、検査官が賄賂を受け取って尿サンプルの操作を黙認している疑惑を報告。モルドバ代表のチームドクターが、選手の「影武者」から採取するなどして検体を操作していると話す様子を隠しカメラで捉えた。

 また、2012年のロンドン五輪女子58キロ級で銅メダルを獲得したタイのラティカン・グーンノイ(Rattikan Gulnoi)は、18歳のときにステロイドを使っていたと話し、メダルを剥奪されかねない事実を認めている。

 ドイツ重量挙げ連盟(BVDG)のクリスティアン・バウムガルトナー(Christian Baumgartner)会長は、IWFのアヤン会長こそが元凶だと明かし、「ウエイトリフティング界に何十年もはびこる、常軌を逸したドーピングのシステムをアヤンが支えている」と話している。

 さらに番組では、国際オリンピック委員会(IOC)からIWFに送られた少なくとも500万ドル(約5億4000万円)の資金が、アヤン会長が管理しているスイスの銀行口座二つに流れ込んだ疑惑も報じた。ハンガリー国籍のアヤン氏は現在80歳で、1970年からIWFの要職を担い、2000年からは会長を務めている。

 IWFは、番組が放映されたその日のうちにAFPに対して声明文を出し、報道内容について調査中だと述べた。

「2008年以降、無数の明らかなうそ、根拠のない疑惑、根も葉もないうわさが広まる中で、今回の番組では新たな情報が提示されたようだ。そしてそれは、クリーンなウエイトリフティング界の発展と、クリーンなスポーツの保護を目指すIWFの取り組みに活用できる可能性がある」

「番組で取りあげられた件について、連盟は可能な限り迅速に調査を開始する予定で、すでに台本と調査資料の閲覧を要請している」「番組の主張を真剣に受け止め、調査に第三者機関の手を借りることも検討していく」 (c)AFP