■「合意なき」離脱

 いわゆる「合意なき」離脱は、英国と欧州の市場と企業が恐れる最悪のシナリオだ。

 政府は、国内で食料品と必須医薬品が不足する恐れがあり、暴動が発生する可能性もあると予測している。企業は、短期間の国境検査でも、貿易経路がふさがれ、ビジネスが滞ると懸念している。

 一方、離脱の支持者は、そのような損害は一時的なもので、英国が自分で政策決定できる自由を手に入れるという価値に見合っていると反論している。

 交渉決裂の恐れから、英国以外のEU加盟27か国は今年前半、やむを得ず2回の離脱延長に合意した。だが、特にフランスなどの国は、3回目の延長にはいら立ちを見せており、抵抗は大きい。

 フランスのジャンイブ・ルドリアン(Jean-Yves Le Drian)外相は1日、英国の合意なき離脱は「最も起こり得る」結末だと述べている。

■総選挙の前倒し

 英国のほぼ全政治家は、総選挙が前倒しされると考えている。しかも、おそらく非常に近いうちに実施されるだろう。少数与党政権は機能しないということは、ジョンソン氏も理解している。

 一方、野党はEU離脱の是非を問う新たな国民投票を有権者に約束することで、政権を奪還できると期待している。2回目の国民投票が実施されれば、前回の結果は覆り、EUに残留する可能性も出てくる。

 議会が内閣に対する不信任案の可決か首相の辞任が、早期選挙実施のきっかけになる可能性もある。ジョンソン氏が自身の主張を撤回し、延期要請しなくても済むように、自ら総選挙の前倒しをすることも考えられる。

 最大野党労働党はブレグジットが延期された時点で、内閣不信任案を提出するとしている。

■離脱の中止

 労働党などEU残留派が総選挙で十分な議席数を獲得し、新しい国民投票を実施することができれば、理論上、このシナリオも大いにあり得る。

 だが、英国のEU離脱の是非をめぐり、3年前よりも国民の二分化が進んでいることが、複数の世論調査で明らかになっている。

 EU離脱派と残留派はほぼ同数で、総選挙でこう着状態を打開できるという保証はない。 (c)AFP