■宇宙条約の規制では不十分

 ハンロン氏は、アポロゆかりの場所にはいつか観光客が押し寄せるようになり、彼らが蹴散らすガラスのように鋭利な月の砂煙によって、こうした場所が傷つけられるかもしれないと懸念する。

「故意にせよ不注意にせよ、そのような行為から守る必要がある」とハンロン氏は話す。

 この問題に対し、米航空宇宙局(NASA)はさまざまな助言を取り入れてきた。その中には、今後の月探査ミッションではアポロの着陸地点から2キロ以内に立ち入るべきではないというものもあった。

 また米議会では、「One Small Step to Protect Human Heritage in Space(「宇宙空間における人類の遺産を保護するための小さな一歩」の意)」法案が上院から提出されたこともある。

 しかし、1967年に発効した国際的な宇宙条約(Outer Space Treaty)は、以下のように非常に明示的なものだった。「月その他の天体を含む宇宙空間は、主権の主張、使用もしくは占拠、またはその他のいかなる手段によっても国家による取得の対象とはならない」

 ネブラスカ大学(University of Nebraska)のジャック・ビアード(Jack Beard)教授(宇宙法)はAFPに、「排他的地域を設定して他国の自由な使用や探査の機会を奪えば、宇宙条約の根幹を否定することになる」と指摘した。

 月旅行は今後数十年間に成長が見込まれている分野だが、宇宙条約に記された協力に関する指針は曖昧で、規制を行うには不十分とみられている。