【1月17日 AFP】米ミシガン州デトロイト(Detroit)で開催される北米国際自動車ショー(North American International Auto Show)で自動車メーカーは毎年、容姿端麗な女性、そして男性に商品説明を担当させている。

 だが、セクハラ告発運動「#MeToo(私も)」の衝撃が全米で今も冷めやらぬ中、外見だけのコンパニオンはほぼ姿を見かけなくなっている。また、自動車メーカーは人種や性の多様性にも気を配るようになっている。

「製品スペシャリスト」と呼ばれる彼らの完璧な笑顔は以前と変わらない。だが、車種ごとの特徴や価格を的確に説明するその姿は、参照するため携帯している「iPad(アイパッド)」がただのお飾りに見えるほどだ。

 アフリカ系の女性プリシラ・テヘダ(Priscilla Tejeda)さんは、トヨタ自動車(Toyota Motor)の製品スペシャリストを務めている。父親はかつて整備士だった。テヘダさんはピンヒール姿で、今年のショーの目玉の一つであるトヨタのスポーツカー「スープラ(Supra)」の最新モデルを紹介している。

「私たちは毎日、顧客に話し掛け、車についての質問に答えながら、彼らが探している製品を見極める」とテヘダさん。

 もちろん、過去にはばかげた性差別的な発言をされたこともある。「君はこの車のおまけでついてくるの?」というのはその典型だ。だが、それ以外のセクハラを経験したことはなく、#MeToo運動以降は以前に比べ礼儀正しい人が多くなった。「今は、車に直接関係ある質問が増えた」とテヘダさんは語る。

■「お飾りではない」

 男性優位の自動車業界においては、自動車ショーで働く男女が「製品スペシャリスト」という新たな肩書を得たことは、ほんの小さな前進にすぎない。

 トヨタの製品スペシャリスト、エマーソン・ニエムチック(Emerson Niemchick)さんは、「私たちは車のことを知っている。ただのお飾りでも、モデルでもない」と語る。「自動車ショーに見た目のいい人たちが多いのは確かだが、彼らも訓練されており、車に関する非常に深い知識を持っている」

 ニエムチックさんとテヘダさんは、米国内で開催される大規模な自動車ショーに製品スペシャリストを派遣する5大事務所の一つ「プロダクション・プラス(Productions Plus)」に所属している。同社は、デトロイトの自動車ショーに出展するさまざまな企業に300人の男女を手配した。今年4月にニューヨークで開催される自動車ショーには500人を派遣する予定だ。

 プロダクション・プラスは、「非常に厳しい」オーディションを通じて、製品スペシャリストを採用する。応募者は、自分の選んだ車種を褒めたたえる動画を同社に送付する。その後、同社による面接が、それを通過すると自動車メーカーによる面接が行われる。

 採用されると、1週間のトレーニングで、自動車メーカー、車種、社風など大量の情報がたたき込まれる。報酬は仕事の種類にもよるが、1日200ドル(約2万2000円)から1000ドル(約11万円)に上る。

 プロダクション・プラスのヘディー・ポップソン(Hedy Popson)社長は、「原稿に沿ったプレゼンテーションができ、壇上から降りて、顧客と会話ができる人物を探している」と語る。ポップソン氏は、自身も自動車ショーのコンパニオンだった経験があり、顧客はしばしばモデルのようなコンパニオンを望んでいることは認識していると言う。だが、同社の製品プロフェッショナルが顧客にするのは、「自動車のブランドや新しい動き」についての話だ。

「どちらかといえば、俳優やマーケティング、営業の知識がある人という方がふさわしい。(伝統的な)コンパニオンを否定するわけではないが、これはモデルの仕事ではない」とポップソン氏は説明する。「状況は劇的に変わったのだ」

 14、15日撮影。(c)AFP