【12月21日 AFP】フランスの小説家で、仏文壇の「アンファンテリブル(恐るべき子ども)」とも呼ばれるミシェル・ウエルベック(Michel Houellebecq)氏が、来月発売される最新作で、同国全土を揺るがした反政府デモ「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト、gilets jaunes)」運動を予言していたことが明らかになった。

 最新作「セロトニン(Serotonin、原題)」の主人公は故郷にUターンした農業技術者。フランス地方部はグローバリゼーションと欧州連合(EU)の共通農業政策(CAP)によって打撃を受けており、主人公の心は深く落ち込んでいる。セロトニン系の抗うつ剤を服用しており、それが作品名の由来となっている。

 同地で主人公は、怒れる地方住民を見いだす。人々は「死んでいるも同然」でありながら反抗心を燃やしており、道路の封鎖を始める。まさに黄色いベスト運動をほうふつさせる。

 とはいえ本作は、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領に揺さぶりをかけた同運動が始まるずっと前に執筆されている。ウエルベック作品の中でも最も暗く悲しい小説だという前評判が既に聞かれている。

 EUに対する強い懐疑心を隠さないウエルベック氏は、前作「服従(Submission)」で、2022年の大統領選挙でイスラム政権が発足し、同国にシャリア(イスラム法)が適用されるというストーリーを展開し、フランス極右思想を描き出して見せた。

「セロトニン」の作品紹介は27日までは公開されない規定になっているが、レビューが一部出始めている。仏誌レザンロックアップティブル(Les Inrockuptibles)の批評家ネリ・カプリリアン(Nelly Kaprielian)氏は、「混沌(こんとん)としながら洗練された小説で、ウエルベック作品の中で最も陰鬱(いんうつ)」と評した。

 またロプス(L'Obs)誌は、「無限の悲しみを描いた美しい作品」であり、ウエルベック氏最高作と明言。同氏の批評家ダビッド・カビリオリ(David Caviglioli)氏は、2か所で泣いたと明かしている。(c)AFP/Alain JEAN-ROBERT, Fiachra GIBBONS