■アンヘル・サラビアさん(61)

「ビジネスで成功するには移住するしかない」と話すサラビアさんは、長年にわたり不法入国を繰り返してきた。「その報いは受けている。だが、私たちは危険を冒す必要があるのだ」

 しかし、6年前に最後の国外退去処分を受けた後、サラビアさんは「不法入国者」として扱われるのはもうたくさんだと思うようになったという。

 今は、メキシコのティフアナ(Tijuana)と米サンディエゴ(San Diego)とを隔てる国境付近、マタデロ(Matadero)渓谷にある人里離れた小屋で暮らしている。

「ここは聖域だよ。国外退去処分を受けた不法移民を犯罪者とみなす人々から遠く離れている。誰も私を非難しない。そっとしておいてくれる」

■サンドラ・エルナンデスさん(28)

 エルナンデスさんは、故郷のホンジュラスに子どもを2人残してきた。北へ向かう旅には、4歳の末娘ダナヤちゃんだけを連れてきた。「ザ・ビースト(The Beast、野獣の意味)」と呼ばれる貨物列車に乗って移動しているという。

 彼女はホンジュラスで家事手伝いとして働いていたが、あまりの低賃金で家族を養うことができなかった。「子どもたちを残してくるのはつらかった」と語り、残してきた6歳と9歳の子どもたちに電話をするたびに泣いてしまうと述べた。

 取材当日は、メキシコ東部グアダルーペ(Guadalupe)の移民保護施設に身を寄せていたエルナンデスさん。3日以内に米国境へと向けて出発する予定と話したが、娘と引き離されることに不安を感じている様子だった。

■ダビド・ラミレスさん(23)

 ホンジュラス出身のラミレスさんは、トラック、船、電車で旅をして、グアダルーペの移民保護施設までやって来た。米国から国外退去処分をこれまでに2回受けているという。移民を襲い、略奪するギャングの標的ともなったが、それでも再び国境を目指すその決意は固い。

 今は保護施設に滞在しながら、「ザ・ビースト」で移動する移民たちに手渡す食料の準備を手伝っている。「食べ物を配ることに喜びを感じているが、同時に悲しい気持ちにもなる」と、ラミレスさんは言う。

 近く、おばの住む米ミシガンを目指して出発するつもりと説明した。