【8月3日 AFP】男子プロテニス協会(ATP)と女子テニス協会(WTA)の大会の本戦で、今週初めて導入されたポイント間の時間やウオーミングアップ時間を厳密に計測する「ショットクロック」について、選手からはおおむね好評ではあるものの、ウオーミングアップの時間を急ぐために、聴いていた音楽を途中で止めなければならないことには、大坂なおみ(Naomi Osaka)ら一部選手から不満の声が上がっている。

 新たに採用されたショットクロックでは、審判がスコアをコールしてからサーブのモーションに入るまでが25秒、選手がコートに入場してからネットに向かうまでが1分、ウオーミングアップが5分、そして最初のプレーまでが1分に設定されている。

 四大大会(グランドスラム)通算3勝を誇るアンディ・マレー(Andy Murray、英国)は、米首都ワシントンで開催されているシティ・オープン(Citi Open 2018)の初戦を終えた後、「テニスにとっては前向きなルール変更だ」とすると、「(これまで時間が明確に表示されなかったのは)テニス界における最もばかげたことの一つだった。どうやって頭の中で25秒を数えろと言うんだ」と話した。

 ある程度の時間の判断については審判に委ねられているものの、ポイント間については時計を見ることで選手と審判が同じ感覚を共有できる。その際にボールをバウンドさせることやルーティンに関しては、サーブのモーションとしてカウントされない。

 グランドスラム通算3勝のスタン・ワウリンカ(Stan Wawrinka、スイス)は、「大満足だ。プレッシャーは特に感じない。時間は十分にあるし、競技にとってプラスだ。(時計で)時間は確認できるけれど、審判と比べると早く感じる」という認識を示した。

 一方、このシステムで最も不満を訴えたのは、ともに20歳の新鋭である大坂と米国のフランシス・ティアフォー(Frances Tiafoe)だった。しかし、それはサーブまでの時間ではなく、コイントスでネットに向かうまでの1分間に関するもので、よりゆったりとしたペースで過ごすことに慣れている若手選手にとって、ヘッドホンを外して音楽を途中で切り上げるのは難しいものとなっている。

 世界ランク41位のティアフォーは、「良いことだし、かなりのスピードアップにつながると思う。飲み物のボトルを動かしたりして、時間をかけている選手もいるからね。だけど、長い試合というものは相変わらず長引くものだ。ウオームアップまでの時間については、気に入らないね。罰金を取られないようにするために、途中でヘッドホンを外さなければならなかった」と話した。

 世界17位の大坂も、初戦の前に米ラッパーのケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)さんの曲を聴いていたが、途中で切り上げなければならないことに気がついたという。

「一番パニックになったのは、コイントスでネットに行くまでの時間。途中で音楽を止めなくてはいけなかった。いつもベンチから立つまで音楽を聴いているのに、途中で切り上げなければならないなんて。それには少し不満だった」

 全米オープンテニス(US Open Tennis Championships 2017)女王のスローン・スティーブンズ(Sloane Stephens、米国)は、特に緊迫した場面でショットクロックに適応できるまでには、もう少し時間がかかるだろうという見解を示した。

「少し慣れない感じで、集中する必要がある。最終セットで6-6で競っているとき、時計を見る余裕はないから。でも、そういうものだから、これから全員がうまく適応していけることを願っている」 (c)AFP/Jim SLATER