■求められる両首脳の自制

 アナリストらは、金委員長にあてたトランプ氏の書簡にみられた「興味深い温かさ」に注目している。「あなたと私の間で、素晴らしい対話が築かれるのを感じていた」とトランプ大統領は書いていた。

 過去2か月の間に北朝鮮への2度にわたる訪問で首脳会談の土台作りをしたマイク・ポンペオ(Mike Pompeo)米国務長官は、北朝鮮との交渉に「すぐに」戻ることを希望すると語った。

「最良の結果は、実務レベルでの対話を開始していることだ。それが続けば上出来」とナラン氏。「プロセスは始まっており、首脳会談は単に延期されただけということになる」

 トランプ大統領は、過去の政権が経験したような、低レベルでの交渉で行き詰まるのを回避すべく、トップレベルの首脳会談に着手しようとした。それによって生じる推進力を利用し、冒頭からの合意形成を目指した。

 他方で、金委員長が北朝鮮で拘束していた米国人3人を解放したことで期待はさらに膨らんだ。解放についてトランプ大統領は、金委員長を称賛した。

 だがコリンズ氏によると、ここ数週間、首脳会談での合意目標をめぐり進展は行き詰まりをみせていたという。「両者とも、朝鮮半島および北朝鮮の非核化について、非常に異なる見解を持っている」

 米政府は北朝鮮による「完全かつ検証可能で不可逆的な」非核化に向けた短期間の計画を求めていた。交渉のテーブルに挙げられていたのは、経済援助と体制保証だが、それは金政権の核兵器放棄と引き換えだ。北朝鮮政府は、それを一方的武装解除の要求とみなしている。