【4月19日 AFP】がんの初期兆候の可能性がある体内のわずかな変化を検出して、ほくろのように黒ずむ実験的な皮膚移植片を開発したとする研究論文を、スイスの科学者チームが18日に発表した。

 研究者らの間で「生物医学的タトゥー」と呼ばれるこの移植片は、実験動物を用いた前臨床試験の段階に達している。機能は約1年間持続し、前立腺がん、肺がん、大腸がん、乳がんという最も一般的な4種類のがんを認識する。

 移植片は、腫瘍の成長に伴って上昇する血中カルシウム濃度に反応することで機能する。理論上、がんの約40%をこの方法で検出できると研究チームは主張している。

 論文の主執筆者で、スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETH Zurich)バイオシステムズ科学工学部のマルチン・フッセネガー(Martin Fussenegger)教授は、AFPの取材に応じた電子メールで、「生物医学的タトゥーは、高カルシウム血症を伴う全てのがんを非常に初期の無症状段階で検出する」と説明した。

「血中カルシウム濃度が高い状態が長期間にわたって続くと、生物医学的タトゥーの細胞内にあるカルシウムセンサーが酵素のチロシナーゼを産生する。この酵素が、アミノ酸を黒色の皮膚色素のメラニンに変換する」

 移植片の部分が黒ずんでいるのに気づいたら、変化の理由を明確にするために医師の診断を受け、治療が必要な場合はそこで最善の方法を判断できるとフッセネガー教授は指摘する。

「早期の発見によって生存の可能性は著しく高くなる。現在では、人々は通常、腫瘍が問題を起こし始めてからでないと病院に行かない。残念ながら、その時点までに手遅れになっている場合が多い」

 生物医学的タトゥーのマウス試験は、高カルシウム血症を起こすがん性の腫瘍を持つマウスと、血中カルシウム濃度に影響しない腫瘍を持つマウスを用いて行われた。38日間の試験では、黒ずんだタトゥーは高カルシウム血症マウスの皮膚にしか現れなかった。タトゥー現れたの時点でマウスは病気の症状を何も示していなかった。

 フッセネガー教授は、生物医学的タトゥーの新たな技術が人を対象とする臨床試験の段階に進むにはさらなる研究と資金が必要になる上、このプロセスには10年を要することも考えられるとしている。

 実験段階の生物医学的タトゥーに関する詳細を記載した論文は、米医学誌「サイエンス・トランスレーショナル・メディシン(Science Translational Medicine)」に掲載された。(c)AFP