【3月29日 AFP】フランスの首都パリで28日、反ユダヤ的な動機により殺害されたとされる高齢のユダヤ人女性を追悼する沈黙の行進が行われ、主催者によると推定3万人が参加した。

 ミレイユ・クノル(Mireille Knoll)さん(85)は23日、パリ市内の自宅アパートで一部が焼けた状態の遺体となって発見された。遺体には刺し傷が11か所あり、犯人は犯行を隠蔽(いんぺい)するためにアパートに火を放ったとみられる。

 28日の行進には、複数の政党の党首も参加。同日にはクノルさんの葬儀も行われ、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領が参列した。

 クノルさんは第2次世界大戦(World War II)中、ナチス・ドイツ(Nazi)占領下のフランスで行われたユダヤ人の一斉検挙と強制収容所への移送を逃れるため、国外に避難していた。フランスでは近年、ユダヤ人が被害に遭う暴力事件が相次いでおり、欧州最大の50万人規模に上る仏ユダヤ人コミュニティー内では不安が広がっている。

 仏当局は、クノルさん殺害の容疑で隣人の20代の男とホームレスの若者の身柄を拘束。クノルさんがユダヤ人であることが犯行の理由だったとみて捜査を進めている。

 パリのラビ(ユダヤ教指導者)長、アイム・コルシア(Haim Korsia)師はAFPに対し、「ナチスができなかったことを、犯罪者・暴漢らが同じ憎しみをもって行った」と語った。(c)AFP/Clare BYRNE, Joseph Schmid