■奴隷市場

 クハラフさんの父親と兄弟の一人が殺された。彼女自身も誘拐された。「彼らは私たちを連れて行き、ありとあらゆることをした。女性たちだけでなく、8歳の少女にまで性的暴行を加えた」

 彼女は、悪名高いISの奴隷市場の一つに連れて行かれた。ヤジディー教徒の女性や少女たちはこの市場で売られ、ISがシリアやイラクで樹立を宣言した「カリフ制国家」で性奴隷として売買された。「彼らは市場で買い物したり、動物を選んだりするのと同じように女性を買っていった」

 捕らわれの身となったクハラフさんは、言語に絶する苦痛を受けたにもかかわらず、自身が授かった信仰やしつけ、そして一緒に拉致され身も心もぼろぼろになった少女たちを支えたいという強い思いに鼓舞され、どうにか心を強く持ち続けた。その間、逃げ出すことは常に考えていたという。

 それから4か月、クハラフさんと数人の少女たちは、施錠が不十分な扉を見つけて逃げ出した。そして長い過酷な旅の末、ついにドイツにたどり着いた。同国は、難を逃れたヤジディー教徒ら約1000人を受け入れ、避難施設の提供と心理的・社会的支援を行っている。

■ISに法の裁きを

 クハラフさんは現在、ISに法の裁きを与えるべく、ヤジディー教徒に対して行われたジェノサイドについて事実を知ってもらおうと活動を続けている。

 イラク政府は昨年12月、ISに掌握されていた広範囲の領土を奪還することに成功。ISに対して勝利を宣言した。

 しかしクハラフさんは、状況はまだまだ不十分であると述べ、「このような罪を犯したISやその関係者たちを、国際法廷の場に立たせたい」と語気を強めた。(c)AFP/Nina LARSON