【2月6日 AFP】人は彼を『ミスター・スノーマン』と呼ぶ。しかし、ミヒール・デ・ルーター(Michiel de Ruiter)さんは、平昌冬季五輪の開幕が迫るなか、自らの肩にかかる重圧を実感している。――五輪の舞台となるスキー会場に大量の雪をつくり出し、ゲレンデを最高のコンディションに保つのが彼の仕事だ。

 本当の山といえるものは一つもない、平坦で海抜の低いオランダで生まれたデ・ルーターさんは、故郷の町にいたころ、自分で土を掘ってスキーの練習コースをつくり、フリースタイルで五輪に2度出場した。それから数十年、53歳になったデ・ルーターさんは、スキーをさまざまな雪づくりの道具に持ち替え、仲間とともに自然の山肌に白い毛布をかぶせる手助けをしている。

 自社のあるオランダのスフラーフェラント('s-Graveland)で、平昌へ向かう直前の最後の準備を整えながら、デ・ルーターさんは平昌行きを生涯待ち望んだ「冒険」と表現し、「出場する選手と同じプレッシャーを感じている」と打ち明けながらも、五輪参加という夢のような体験が「待ちきれない」と話した。

 デ・ルーターさんいわく、仕事の第一歩は「韓国の造雪機がこれまでにつくった雪の量を評価すること。それからシャベルと機械を使い、望みの場所へと雪を運ぶこと」だという。その後はコースをつくり、雪が良い状態を保てるように気を配る。

「ミスは許されません。そういう気持ちでないと、すべてが悪い方へ転ぶこともある」とデ・ルーターさんは話す。雪が解け始めてしまった場合は、新たにつくらなくてはならない。今回は「万が一」に備え、2万3000トンの雪を供給できるだけの材料を用意しているという。

 人工造雪のスペシャリストであるデ・ルーターさんが五輪に参加する機会を得られたのは、2017年1月、スペインで開かれていた大会を熟練の技で中止の危機から救ったことがきっかけだった。

 シエラネバダ(Sierra Nevada)山脈で開催されたフリースタイルスキーの大会で、気温が非常に高く、選手が15メートルものジャンプをする台から水がしたたっている状態だったが、デ・ルーターさんは氷を満たした筒状の機械を使って「不可能」を成し遂げ、ジャンプ台が見る影もなく崩れるのをなんとか防いだ。「パイプを使って雪を固めたんです。その一件の後、韓国へも来てくれないかという要請がありました」とデ・ルーターさんは話す。