■最悪のシナリオは?

 パイル氏は「最悪のシナリオは1963年の噴火が繰り返されること。もしかしたらより規模が大きくなるかもしれない」と語った。また「避難が必要となるのは主に火山から10~12キロの地域で全島避難の必要はないだろう」との見解を示した。

 もし、アグン山で大規模噴火が起きた場合、その影響は硫黄を含む火山灰の降下や溶岩流の発生の他、島の最大の収入源である観光業の喪失にまで広がる恐れがある。昨年バリ島を訪れた観光客の数は500万人近い。

 英国のオープン大学(Open University)のデービッド・ロザリー(David Rothery)客員教授は、「降下灰は呼吸障害をもたらし、農作物に多大な影響を及ぼす。また家屋屋根の崩壊を招く他、雨水と混ざると壊滅的な火山泥流が起きる」と話す。

 灰そのものに毒性はないとされているが、航空機に与えるダメージは大きい。バリ国際空港では現在、全便が欠航となっている。滑走路が滑りやすくなり離着陸時の事故リスクが増大するだけでなく、エンジンのタービンに付着し、最悪のケースでは停止してしまうこともある。

 英マンチェスター大学(University of Manchester)のマイク・バートン(Mike Burton)教授は、大規模噴火では、山腹を大量の岩屑が流れ落ちる「岩屑なだれ」が発生する恐れがあると指摘する。また雨期には、火山灰や溶岩の火山泥流の危険が高まることにも触れ、「火山泥流は流れが速く広い地域に影響を及ぼすため極めて危険。インフラに損害を与え、生命を危険にさらす」と説明した。(c)AFP