【10月19日 東方新報】北京大学(Peking University)博士課程歴史学科の学生、婁滔(Lou Tao)さん(29歳)は9日、臓器提供を申し出た。

 婁さんは2016年1月、中国で通称「少しずつ凍る病気」と呼ばれる運動ニューロン疾患(MND)と診断された。この1年余りで婁さんの筋肉と運動神経は徐々にむしばまれ、自力で動くことが困難になった。今では、自分の体をコントロールする能力は完全に失われ、病室のベッドの上で横になっている。

 病魔は、何の兆候もなく襲いかかった。15年の夏休み、婁さんが「階段の昇り降りがつらい」と漏らしていたのを、父の婁功余(Lou Gongyu)さんは覚えているという。当初は、特に気に止めなかったという。

 しかし同年10月、婁さんはふと自分の左足でつま先立ちができなくなっていることに気付き、北京大学第三医院の整形外科で検査と治療を行った。状況は良くなるどころか、治療期間中には右腕を持ち上げることが困難になった。婁さんは医師のアドバイスを受け、神経内科を受診することにした。

 翌16年1月までの間、婁さんは神経内科でさまざまな検査を行った。その結果、婁さんは運動ニューロン疾患であると診断された。

 婁さんは、非常に優秀な学生としての道を歩んできた。湖北省(Hubei)恩施トゥチャ族ミャオ族自治州から北京師範大学(Beijing Normal University)歴史学科の大学進学準備コースに07年に入学、1年後には4年制コースに進学した。成績は学科内で常に3位以内を保ち、北京師範大学の歴史学院へ推薦入学した。院生時代の3年間、婁さんの成績は常にトップで、奨学金が贈られた。有名学術雑誌にも論文を1本発表している。名門・北京大学歴史学科博士課程に合格した際も、筆記、面接試験とも1位の成績だったという。

 運動ニューロン疾患は、運動能力が徐々に衰えていく過程でも意識は常にはっきりしている。病状の進行が速いのが特徴だ。婁さんは当初は自宅療養をしており、その頃はまだ本も読めたし字も書けた。しかしすぐにペンも持てなくなった。