■最後まで名前は聞かず

「彼が死にかけているのが分かった。私たちは彼をつかんで、引きずって通りを渡った」。ユアさんが男性の止血を試みていたとき、2人の女性が近づいてきた。1人は胸を撃たれ、別の1人は背中を撃たれていた。

 ユアさんは「3人を外傷センターに運ばなければいけなかった」ため、他の男性と通りがかりの車を止め、「あなたの車が必要だ」と叫んだ。

「それで血だらけの3人を車に乗せた。1人は大量に出血していた。この男性は全くちゅうちょしなかった。この日の英雄について語るなら、彼こそが英雄だ。こういった人たちがあちこちにいた」。警官として33年のキャリアを持つユアさんだが、声を震わせながら語った。

 病院に向かう途中、ユアさんは女性のうち1人の手を握って放さなかった。「みんな泣きながら、自分たちは死ぬんだ、もう死ぬんだと言っていた。彼女らに言ったことを今でも覚えている。『今夜じゃない、今夜じゃない。君は今夜死なない。大丈夫だ』と」

 3人は病院に到着し、一命をとりとめた。ユアさんは「彼らが無事なのは分かっているが、名前は知らない」と語った。(c)AFP/Cyril JULIEN