【10月3日 AFP】お気に入りの選手の背番号をまとうことは今後、チームへの忠誠を示す以上の意味を持つようになるかもしれない。米スポーツ用品メーカーのナイキ(Nike)は、米プロバスケットボール協会(NBA)と新たなパートナーシップを提携したことに合わせ、「スマートユニホーム」の構想を明らかにしている。

 着ているユニホームのラベル部分にスマートフォンをかざすと、ケビン・デュラント(Kevin Durant)のスタッツやブレイク・グリフィン(Blake Griffin)の試合後の会見をリアルタイムで確認したり、スター選手が試合前のモチベーションアップに使っている楽曲のプレイリストを入手したりすることができる。

 先月15日に行われたこのハイテクユニホームのお披露目には、デュラントやグリフィンといった選手のほかに、ラッパーのトラヴィス・スコット(Travis Scott)も登場。さらにニューヨーク・ニックス(New York Knicks)に加入したフランス出身の新人、フランク・エンティリキーナ (Frank Ntilikina)もユニホームの技術を売り込んだ。

 ナイキのデジタル・イノベーション部門を統括するステファン・オランダー(Stefan Olander)氏は、NFC(ニア・フィールド・コミュニケーション)チップの埋め込まれた今回の新ユニホームについて、ファンとスポーツとの距離をかつてなく近づけるものだと表現し、「われわれは、ほかのどこにもないコンテンツにアクセスする権利を有しており、そしてその唯一無二の付加価値を、ユニホームを通じて顧客に届けます」と話した。

 ナイキは独メーカーのアディダス(Adidas)に代わり、10月20日にスタートする2017-18シーズンから全30チームの公式サプライヤーとなった。2015年6月に結ばれた8年間の超大型契約について、内容の正式な発表はないものの、専門家は10億ドル(約1129億円)前後だと見積もっている。

■「他のスポーツへも拡大を」

 今回の契約で、王者ゴールデンステイト・ウォリアーズ(Golden State Warriors)やレブロン・ジェームズ(LeBron James)擁するクリーブランド・キャバリアーズ(Cleveland Cavaliers)、さらにはNBAを象徴するチームの一つであるロサンゼルス・レイカーズ(Los Angeles Lakers)やニックスといったチームのユニホームに、ナイキのロゴ「スウォシュ」が縫い付けられることになった。

 ナイキはNBAとそのパートナーから動画や試合のデータ、控室の映像などのコンテンツの独占提供を受ける権利を手にしており、そしてファンは今後「コネクテット・ジャージー」を通じてそうしたコンテンツにアクセスできるようになる。

 イノベーション部の担当者は「われわれのNFC技術は、アップルペイ(Apple Pay)を使った遠隔決済や、交通系カードで使われているのと同様のものです。ユニホームに埋め込んだチップが、購入者にその人だけの体験を提供します」と話している。

 情報はユニホームと連携するアプリの間でだけやり取りされるわけではなく、ユニホームの情報を読み取ることで、ナイキには購入者の所在地などの情報がもたらされる。選手もSNSの要領で、自分のユニホームを買ってくれたファンだけにメッセージを送ることができる。

 ナイキは今回、チームごとに4種類のユニホームを発売するが、そのうちチップ入りユニホームには110ドル版(約1万2500円)と200ドル版(約2万2500円)がある。

 もちろん、このテクノロジーをバスケットボール以外にも活用しない手はない。オランダー氏は「この体験を他競技にも広げることを検討しない理由はどこにもありません。結局のところ、われわれの仕事は、顧客が受け取る体験の価値を高めることなのですから」と話している。(c)AFP/Jérome RASETTI