■オーガニックなピッチ

 ビンス氏は若い頃、ニューエージ系のバックパッカーだった。今でも自分は実業家というよりも、環境保護活動家だと自負している。1990年代、ローバーズのスタジアム近くの丘にキャンピングカーを止めて暮らしていた時に、最初の風力タービンを建てた。

 ホームでの勝利は、エコフレンドリーなメッセージを広めるためにも不可欠だとビンス氏は言う。「ここはオーガニックピッチだ。だが、サッカーのピッチとして優れていなければ意味がない」

 クラブのウェブサイトでは、情熱あふれるグラウンド整備士のアダム・ウィッチェル(Adam Witchell)氏が、完全にオーガニックなピッチ整備という挑戦について熱く語っている。「オーガニック製品しか使わないというだけでなく、動物性のものを使わない」。つまり動物のふんから作った有機肥料なども除外している。「私自身にとっても、ハチにとっても健康だし、何よりも選手にとって健康だ」と言う。また芝の世話も通常より「手をかけて」いる。文字通り、手で雑草を抜いているのだ。

 こうした特徴は選手や観客が口にするフードにも表れている。クラブシェフのエム・フランクリン(Em Franklin)氏によると、ビーガンメニューは「食べやすい」。その証拠にスタジアムでのフードの売り上げは伸びているという。「栄養摂取の面では、特にアスリートに必要な量のタンパク質をとるのは、そんなに難しくない」。取材した試合当日の選手用メニューは、ヒヨコ豆のカレーだった。

 ビーガン食は、選手がプライベートで食べるものにまで強制はされていないが、マーク・クーパー(Mark Cooper)監督をはじめ進んで菜食に切り替えた選手もいる。

 ファンの間では、スタジアムのビーガンメニューに物足りないという感想も一部聞こえる。ベジタブルバーガーを食べながら「段ボールとチリソースを食べているみたいだ」と言ったファンもいた。

 だが、サッカーファンは飲み物では意見が一致するようで、豆乳のミルクティーなど考えられないようだ。たとえオーガニックに変わっても、選ぶのはビールだ。(c)AFP/Maxime MAMET