【3月7日 AFP】19世紀ハンガリーの作曲家、フランツ・リスト(Franz Liszt)が制作した幻のオペラがよみがえる。自筆譜を発見した英大学の研究者が2年を費やして解読に成功。「音楽史の中でも比類のない作品」だといい、制作開始から180年近くを経て今年6月に英ウェールズ(Wales)で上演する予定だ。

 多くの作品を生みだし熱狂的なファンを獲得したリストは主にピアノ曲で知られ、オペラはわずか1作品しか発表していない。それも13歳の時に書き上げた一幕ものだ。

 しかし2年前、英ケンブリッジ大学(Cambridge University)のデービッド・トリペット(David Trippett)上級講師は、リストが長年過ごしたドイツのワイマール(Weimar)のアーカイブから別のオペラ作品の楽譜を発見した。リストが1849年に取りかかったこの作品は長い間、未完のまま破棄されたと考えられていた。

 このオペラは、平和を愛する一方で快楽主義だったアッシリア王の滅亡を描いた英国の詩人ジョージ・ゴードン・バイロン(George Gordon Byron)の戯曲「サルダナパラス(Sardanapalus)」を基にした作品で、イタリア語で書かれている。

 トリペット氏はこの作品について「イタリアの叙情主義と調和的な革新」が独特な形で融合しており、画期的だと評する。同時代のドイツの作曲家リヒャルト・ワーグナー(Richard Wagner)の影響もみられるという。

 楽譜は一幕分しか残されていない上、リスト自身しか理解できない簡略化された表記法で書かれていたため、最初はほとんど解読できなかったとトリペット氏は言う。しかし、リストが「頭の中で曲をすべて作った後に楽譜に書き起こした」ことが明らかとなり、オペラの復元にこぎ着けたという。

 トリペット氏は6月に、ウェールズで毎年開催されているオペラ歌手のコンクール「BBCカーディフ・シンガー・オブ・ザ・ワールド(BBC Cardiff Singer of the World)」でこのオペラを上演する計画だ。(c)AFP