【1月6日 AFP】ホッキョクグマは一時も心を休めることができない。

 北極圏に生息する巨大な肉食動物のホッキョクグマが、気候変動を切り抜けるためにすでに苦闘しているのに加えて、化学物質中毒のリスクにも直面していることが、5日に発表された研究報告で明らかになった。その中毒リスクは、大人のクマで安全とみなされる水準を100倍も上回るという。

 米環境毒性化学会(SETAC)の学会誌に掲載された研究論文によると、汚染された母乳で育つ子グマの場合、このリスクが1000倍に増大するという。

 論文の主執筆者で、イタリアのミラノ・ビコッカ大学(University of Milano Bicocca)の毒物学者のサラ・ビジャ(Sara Villa)氏は「今回の研究は(POPsとして知られる)残留性有機汚染物質が北極圏の生態系に及ぼす全般的なリスクを定量化する世界初の試みだ」と述べた。

 ビジャ氏と研究チームは今回の研究で、ホッキョクグマ、アザラシ、ホッキョクダラについて、これらの極めて毒性の強い化合物への暴露に関する40年分の調査データを詳細に調べた。

 調査データは、米アラスカ(Alaska)州から、スカンジナビア(Scandinavia)半島の北にあるノルウェー・スバルバル諸島(Svalbard Islands)までの範囲に生息するホッキョクグマを対象とした。これらの地域に比べて、ロシアの北極圏の個体群に関するデータははるかに少ない。

 拡散性の高い化学物質のPOPsは、自然環境に数十年間残留する可能性があり、食物連鎖で上位に行くほど濃縮され、濃度が高くなる。POPsはプランクトンから魚、アザラシ、ホッキョクグマに至るまでに、高い中毒量にまで蓄積される。工業や農業で使用されるほか、一部は繊維の難燃剤などの消費者向け製品にも使われている。

 PCB(ポリ塩化ビフェニル)と呼ばれる化学物質群は、がんやホルモンの混乱を引き起こすことが判明し、1970年代に広く使用禁止となったが、1990年代になっても、北極圏の哺乳類動物の体内には依然として高濃度で蓄積されていた。

 その痕跡は今日でもなお残っている。

 だが、PCBが減少しても、代わりに新たな汚染物質群が出現し、現在では化学物質による最大の脅威をホッキョクグマに及ぼしていることが、今回の研究で明らかになった。