■子グマに高リスク

「(PFOSとして広く知られる)ペルフルオロオクタンスルホン酸は、哺乳類にとっては猛毒とみなされている」と、論文は指摘する。ホッキョクグマのPFOS体内濃度は驚くほど高く、アザラシの100倍にも及ぶ。さらには、ホッキョクグマが汚染されたアザラシを食べると、毒素の濃度が34倍に高まる。

 PCBと異なる点は、PFOSが現在もまだ製造されていることと、脂肪ではなくタンパク質(筋肉)に蓄積することだ。

 PFOSは主に、紙、包装、繊維などの撥水・撥油処理剤や、ある種の消火剤の泡などに使われている。

 ホッキョクグマの体内組織に存在する有機化合物19種が及ぼす混合の「有害リスク」については、PFOSに由来するリスクがその半分を占めていた。

 子グマは特に顕著なリスクに直面している。

 これらの新たな脅威を考慮に入れなくても、約2万6000頭と推定されるホッキョクグマの総個体数は今世紀半ばまでに3分の1を失う方向に向かっていることが、最近の調査で結論付けられている。

 主な脅威は、海氷の急速な減少だ。ホッキョクグマはアザラシの狩りをするのに、海に浮かぶ海氷を足場として用いる。氷のない海での泳ぎでは、ホッキョクグマはアザラシに勝てない。

 科学者らによると、北極圏の気温を地球平均の2倍のペースで上昇させている地球温暖化により、20~30年以内に夏季の北極海で海氷が消失する可能性があるという。

 こうした脅威が加わることを踏まえた上で「新たに出現する汚染物質に対する規制措置を継続的に導入していくことが不可欠となる」と、ビジャ氏は警鐘を鳴らした。(c)AFP/Marlowe HOOD