【12月17日 AFP】イングランド・プレミアリーグのチェルシー(Chelsea)やクリスタルパレス(Crystal Palace)が、スカウトとして雇用していた人物について、かつて児童虐待の画像を持ち込んだ犯罪者だったと警察から警告されていたにもかかわらず、それを無視していたことが明らかになった。英紙タイムズ(The Times)が16日、両クラブに情報を伝えた元警官の話として報じた。

 現在は退職しているクライブ・ドリスコル(Clive Driscoll)元警部は、スカウトを担当していたジョン・ブッチャー(John Butcher)氏に関する情報を2001年に両クラブに警告したものの、「月から電話」しているようなものだったと振り返った。

 ブッチャー氏は、1993年にオランダから英国に児童虐待の画像を密輸しようとしたとして有罪判決を受けており、2009年にはわいせつな画像を見ていたところを逮捕され、性犯罪者として7年間登録されていたという。

 現在67歳のブッチャー氏は、「児童に身体的虐待を加えたことは決してない」と否定している。

 英サッカー界では現在、元ユース選手への性的虐待疑惑が発覚する事態に直面しており、今回の新たな事実により、巨額資金が動めく同スポーツ界の土台を揺るがすスキャンダルは、さらに拡大することになるとみられる。先日には英警察が、プレミアリーグの4チームを含め、ロンドン(London)を拠点とする計30クラブを捜査していることを発表した。

 ドリスコル元警部は、チェルシーやクリスタルパレス、ミルウォール(Millwall FC)に対し、フリーランスでスカウトを務めていたブッチャー氏の前科に関する情報を提供していたと主張しており、「私はミルウォールやチェルシー、そしてクリスタルパレスに対し、2001年にブッチャーの情報を伝えて警告した。当時私は警部で、警察署から彼らに連絡を入れたが、月から電話しているようなものだった。私は彼の前科を伝えたのに、彼らはサッカーのことだけを考えていた」と語った。

 元警部は、この問題に対してクラブが示した反応に驚いたと明かし、「彼らが重視していたのは、彼が優秀なスカウトであるということだけだった。私はそんなことより、彼が児童ポルノを密輸した前科があるということの方が、もっと重要だと訴えた」と語った。

 ブッチャー氏の前科に関する情報が、ドリスコル元警部からチェルシーにもたらされたのは、ロシアの大富豪ロマン・アブラモビッチ(Roman Abramovich)氏がオーナーに就任する2年前のことであり、今回の元警部の告白は、同クラブにとってさらに不都合な情報になるとみられる。

 チェルシーは、元ユース選手のギャリー・ジョンソン(Gary Johnson)氏に対し、2015年に5万ポンド(約740万円)を支払う代わりに、元スカウトのエディー・ヒース(Eddie Heath)氏から性的虐待を受けたことを口止めしたとして、厳しい批判にさらされている。

 1983年に54歳で死去したヒース氏から、性的虐待を受けていた事実をジョンソン氏が告白して以降、チェルシーでは元警察官を含む元ユース選手が次々と名乗り出て、故人から虐待を受けていたことや、チームが虐待の事実を把握していたことなどを訴えている。

 チェルシーは現在、弁護士を中心に調査チームを立ち上げてヒース氏に関する疑惑を調べており、今後は巨額の支払いが求められる集団訴訟に直面する可能性がある。(c)AFP/Pirate IRWIN