■警官が遺体の「情報提供料」を要求

 ドゥテルテ大統領の麻薬撲滅作戦の影響で葬儀屋は大忙しとはいえ、遺族の大半は貧困者で葬儀費用を払えないため、もうけにはつながっていないのが現状だ。

 身内が殺害された事実を知らなかったり、麻薬と関わりがあるとみられることを恐れたりして、遺族が遺体を引き取りにこないこともあるという。2~3か月たっても引き取り手のない遺体は葬儀業者側が費用を負担して公営墓地に埋葬される。

 さらに、遺体情報を提供したとして葬儀業者に「手数料」を要求する警察官もいるありさまだ。

 こうした状況を仕事と割り切る同業者もいるが、オルメネタさんは麻薬撲滅戦争の影響でかなり心が傷ついている。

 オルメネタさんは頭蓋骨にくぎを打ち込まれて殺害された男性のことをよく思い返し、小物の麻薬密売人までもが殺されるのはおかしいと考えるようになった。「彼らは麻薬の犠牲者です。飢えをしのぐため、もしかしたら子どものために麻薬に手を出す必要があったのかもしれない。彼らには更生するチャンスが与えられるべきだったんです」

 そしてカトリック教徒のオルメネタさんはこう付け加えた。「聖書にも書かれているでしょう? 汝(なんじ)殺すなかれって」(c)AFP/Ayee Macaraig