【11月3日 AFP】米大統領選の投票日が間近に迫るなか、米国の有権者の多くは、候補者同士によるネガティブキャンペーンにすっかり疲弊してしまっているようだ──。

「選挙中には何らかのストレスを感じるものだが、これほどひどいのは初めてだ」と、カリフォルニア(California)州ロサンゼルス(Los Angeles)の心理学者、ジュディ・ブルーム(Judi Bloom)氏は言う。

 米国心理学会(APA)の依頼を受け、世論調査会社ハリスポール(Harris Poll)が実施した最近の調査によると、近年まれにみる敵対心むき出しの選挙戦に米国民の半数以上がストレスを感じているという。

 共和党候補のドナルド・トランプ(Donald Trump)氏は、バラク・オバマ(Barack Obama)大統領の医療保険政策、シリア政策、貿易政策を「大失敗」と批判し続け、民主党候補のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)氏が大統領になったら、米国は「破滅する」との発言を止めない。

 トランプ氏はまた、メキシコとの国境を越えて米国に入国してくる不法移民を「犯罪者」呼ばわりし、シリア難民の中にジハーディスト(イスラム過激派)がまぎれていると主張してきた。

 一方のクリントン氏も、トランプ氏は精神的に「不安定」としながら、「短気過ぎるため、誰かに気分を害されたという理由だけで」核戦争を始めかねないと批判。同氏の女性蔑視発言や性的暴行疑惑についても激しく責め立てている。

 このような状況についてブルーム氏は、「候補者が互いに嘘つきだと罵り合ったり、不正選挙が行われていると言ったり…ネガティブな選挙戦に有権者の間には『これ以上は耐えられない』といった絶望感が出始めてる」と指摘。そして「『(隣国)カナダに移住する』という声もたくさん耳にする」と続けた。

 西部アリゾナ(Arizona)州の精神科医ロバート・ブライト(Robert Bright)氏も、2001年9月11日に起こった米国同時多発テロや世界的な金融危機以来、米国民の間にこれほどの不安を見たことはないと話し、「ある重症患者が、これ以上選挙CMを見なくて済むようになることはいいことだと、(自らの)死について話していた」とAFPの取材にコメントした。