【10月19日 AFP】米大統領選で窮地に立たされた共和党候補ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏に対し、思いもよらない場所から中指が突き立てられた。東京で18日に発表された「ウミット ベナン(Umit Benan)」17年春夏コレクションは、彼が忌み嫌う“テキサスで働くメキシコ人”からインスピレーションを得たものだ。

 デザイナーのウミット・ベナンは、ドイツ生まれのトルコ人。スイスで教育をうけ、ミラノを拠点に活動し、過去5年間はパリで新作を発表してきた。

 日本初となる今回のショーでは、砂を敷きつめたランウェイにサボテンを植え、テキサスの砂漠へと変身させた。そこに、メキシコの色彩や素材に、アメリカのウエスタンスタイルを融合させたウェアをまとったモデルたちが次々と登場する。

 ベナンはこれまでも、デザインを通じて、彼のノマド的な暮らしとエキゾチックな素性のコントラストを探求してきた。今回は、テキサスからニューメキシコへの旅から着想を得たという。

 シャープなブレザーと合わせたストライプのパジャマ風パンツ、レザーのバックパックと合わせたストーンウォッシュのジーンズ、ブルーデニム、レザーの野球帽、ヤシの木やサボテンモチーフを背面にあしらったジャケット――西部のカウボーイとイタリアのテーラリングスタイルが出会い、そこに米国で人気のワークスタイルが差し込まれていく。

 このコンセプトにベナンは3年間にわたり取り組んできたというが、米大統領選まであと20日という今ほどぴったりのタイミングはないだろう。民主党候補のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)氏に対する共和党候補のトランプ氏は、メキシコからの不法移民排斥を掲げている。

「私のコレクションにはいつも政治的な要素が含まれているが、意図的ではない」とベナンは語る。

 一連のスキャンダルに揺れるトランプ氏は、メキシコとの国境に壁を築くと公言している。「これは、まさにメキシコとアメリカの境界に基づいたもの。ばかげているけれど、間違いなくそれが私のインスピレーションになった」とベナン。

 彼にとって、ショーは商業目的というよりも、「自らのビジョンを祝う」ためのものであるという。つまり今回のショーは、トランプに対して立てられた中指ということだろうか?

 そう尋ねると、ベナンは笑いながら「常にね」と答えた。(c)AFP/JENNIE MATTHEW