【10月13日 AFP】欧州の刑務所がジハーディスト(イスラム過激派)の「温床」になりつつあるとする報告書を、英シンクタンクが11日発表した。報告書は、暴力的な過激主義が、自らの犯罪行為への贖罪(しょくざい)になると考える向きも一部存在すると指摘している。

 ロンドン大学キングスカレッジ(King's College London)の過激化・政治暴力研究国際センター(ICSR)がまとめた報告書、「Criminal Pasts, Terrorist Futures: European Jihadists and the New Crime-Terror Nexus(犯罪の過去、未来のテロリスト:欧州ジハーディストと犯罪・テロの新連鎖)」によると、ジハーディストと犯罪者の集団は、同じグループに属する人々からともに構成員を採用しており、また両集団の社会的ネットワークにも交わりがみられるという。

 2011年以降に勧誘された欧州のジハーディストのプロフィルを調査したこの報告書は、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の出現により犯罪とテロとの結びつきが強化されたと指摘している。

 報告書によると、ISは大学や宗教施設ではなく貧困地域や刑務所、そして社会的に地位の低い人々のなかから、犯罪歴のある個人を探し出し、勧誘するようになっているという。また、刑務所での勧誘については、武器の取り扱いや、犯罪行為を通じた資金調達など、ISにとっての「転用可能な技能」へのアクセスを意味するとした。

 研究者らは今回、ベルギー、英国、デンマーク、フランス、ドイツ、オランダの犯罪歴を持つジハーディスト79人のプロフィルをまとめた。対象者は全員、戦闘目的で渡航、もしくは欧州でのテロ計画に関与していた。

 報告書によると、過去5年間に推定5000人の西欧人が中東地域に渡航し、ISや、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)系の武装組織「シリア征服戦線(Syrian Fateh al-Sham Front)」などに参加しているという。また、対象者79人のうち57%が過激化する前に刑務所に収容されており、うち少なくとも27%が服役中に過激化していた。

 報告書執筆者の1人、ICSRのピーター・ニューマン(Peter Neumann)氏は、今回の調査結果が示しているのは、ISの行動における変化だと話し、これまでのように宗教を中心に据えた組織は目指してはいないようだと指摘する。「ISは残忍性、力強さ、権力など、反社会的勢力に属していることも多いこうした若者たちが追い求めるものを体現している」

(c)AFP/Ruth HOLMES