【9月24日 AFP】自転車ロードレースのブラッドリー・ウィギンス(Bradley Wiggins、英国)が、三つの主要レースを前に、ステロイドの一種であるトリアムシノロン(triamcinolone)の使用を許可された事実について、元チームドクターが「驚いている」と語った。

 五輪で複数のメダルを獲得しているウィギンスは先週、ハッカー集団によって医療記録が公表され、優勝した2012年のツール・ド・フランス(Tour de France)をはじめ、2011年の同レースと2013年のジロ・デ・イタリア(Giro d'Italia)の数日前に、治療目的使用の適用措置(Therapeutic Use Exemption、TUE)で強力なステロイド薬であるトリアムシノロンの使用が認められていたことが判明した。

 2009年のツールで総合4位に入ったウィギンスが当時所属していたガーミン・スリップストリーム(Garmin - Slipstream)でチームドクターを務めていたプレンティス・ステフェン(Prentice Steffen)氏は、この事実を知り、国際自転車競技連合(UCI)がTUEを許可したことに疑問を投げかけた。

 ステフェン氏は23日、英国放送協会(BBC)の報道番組「ニューズナイト(Newsnight)」で、先日リークされたウィギンスのTUEに関する詳細について、「良くない」という見解を示し、「2度のツール・ド・フランスとジロ・デ・イタリアの計3レースの直前に、TUEでトリアムシノロンの筋肉注射を許可されていたことに驚いた」と語った。

「シーズンで最も重要なレースの前に、長く作用するステロイド剤を筋肉に多量摂取する必要があったのは、偶然であると考えるしかない。それでも今思い返せば、健康とスポーツの観点からしても、それは良くないことだ」

 スポーツ界は現在、ロシア人らとみられているハッカー組織ファンシー・ベアーズ(Fancy Bears)が、世界反ドーピング機関(WADA)に不正アクセスして有名選手の医療データをリークする問題に遭遇しており、女子テニスのヴィーナス・ウィリアムス(Venus Williams)とセレーナ・ウィリアムス(Serena Williams)の姉妹や、体操女子のシモーネ・バイルス(Simone Biles)ら米国選手をはじめ、チームスカイ(Team Sky)でウィギンスのチームメートであるクリス・フルーム(Chris Froome)ら英国選手も被害者となっている。

 これらの選手はいずれも、本来であれば反ドーピング規則に抵触する薬を服用できるTUEが認められている。TUEが許可されるのは、持病や体調不良により通常では使用が禁止されている薬を必要とする選手となっており、これまで情報がリークされた選手に不正行為がみられた事実は一切ない。

 ウィギンスはTUEを申請してトリアムシノロンを使用したことについて、ぜんそくの治療のためと説明している。(c)AFP