【9月9日 AFP】手付かずの自然が残る世界の原生地域が消滅しつつあるとの研究結果が8日、発表された。1990年代以降、地球上の原生地域の約10%が消失したという。

 米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に発表された研究論文は、生態系の根幹を形成するこれらの極めて重要な地域に関する懸念を浮き彫りにしている。特に懸念されるのは、消失面積が最も大きかった南米アマゾンとアフリカ中部の両地域だ。

 論文の主執筆者で、豪クイーンズランド大学(University of Queensland)の研究者のジェームズ・ワトソン(James Watson)氏は、AFPの取材に「原生地域は、元の状態に戻したり、補ったりすることはできない。ひとたび消失すれば、もう戻らないのだ」と語り、「これは、生物種の絶滅とまったく同じだ」と続けた。

 研究チームは今回、現存する原生地域の地図を作製、1990年代初めに同じ方法で作製された地図と比較。その結果、現在の原生地域は、世界の陸地の約20%、面積にして約3010万平方キロに及んでいることが分かった。原生地域の大半は、オーストラリア、北米、アジア北部、北アフリカに存在する。

 過去の地図と最新地図との比較では、この20年間で、原生地域の10%近くに相当する約340万平方キロが消失したことが判明した。消失した総面積は、米アラスカ(Alaska)州の2倍、アマゾン全域の約半分に相当する。消失面積が最も大きかった南米とアフリカでは、それぞれ原生地域の30%と14%の消失に見舞われていた。

 今回の研究では、原生地域消失の理由にまでは踏み込んでいないが、人口増加による開発の拡大に帰着すると、ワトソン氏は述べている。

 米自然保護団体「野生動物保護協会(WCS)」に所属するワトソン氏は、原生地域を保護するための時間が残り少なくなっているとしながら、「これは本当に重要だ。原生の自然がこれほど急速なペースで失われているのは深刻な事態だ」と指摘した。(c)AFP/Kerry SHERIDAN