■夫・庵野秀明の存在

 同展のレセプションには、夫であるアニメーター・映画監督の庵野秀明(Hideaki Anno)も来場した。庵野も『新世紀エヴァンゲリオン』『シン・ゴジラ』などで知られる人気作家。2人は日本を代表するクリエイターカップルだ。入り口には庵野監督からの祝い花が飾られ、また会場に掲げてある安野のプロフィールには「好きな映画:シン・ゴジラ」という箇所もあり、お互いリスペクトしあっている姿勢が見受けられる。

「監督とはすごく分かりあえるので、最初から説明して話すという必要がない。心の中で思っていたことを急に言っても『うん、そうだね』って分かりあえるので、すごく楽。感性が似ているんだと思う」

夫・庵野秀明からのお花も届く(2016年8月31日撮影)。(c)MODE PRESS/Fuyuko Tsuji

 しかし多忙なクリエイター同士、衝突はないのだろうか? 2人のルールを尋ねると「最初のころ、私の作品のアラを指摘されてすごくダメージを受けたので、褒めるだけにしてほしいと伝えた(笑)もちろん私のほうから『どうしたらいい?』ってアドバイスを求めることはあるけど。あとお互いのジャンルが違って、漫画には漫画のルールやテンポがあり、私もアニメのことは分からない。だから変に中途半端なことは言わないようにしている」と衝突を避けるコツを明かす。

 そして「ラブ」を育むルールは、「とりあえずなんでも話すこと」だという。「たとえば相手に対して怒っても、あとで『こういう理由で機嫌が悪かった』と素直に申告したりする。逆に、相手が怒ったら、後で改めてその原因と本当に伝えたかったことを聞いたり。しばらくむっとしているけど、30分後ぐらいに『ごめんね』と謝られたりする」と笑う安野。2人の関係は、自分たちをモデルにした『監督不行届』の中で明かされていたように、現在もうまくいっているようだ。

会場で先行販売される作品集(2016年8月31日撮影)。(c)MODE PRESS/Fuyuko Tsuji

■絶対に漫画をあきらめない理由

 そんな夫・庵野も「素晴らしい」と絶賛したという今回の展覧会。数々の原画を間近で見れば、美しい筆致や修正液のリアルな跡も確認することができる。一枚一枚にかけられた労力を考えると気が遠くなりそうだ。紆余曲折を経てなお、この仕事を続けられるモチベーションはいったいどこからくるのだろうか。

「やっぱり自分が子供のときに漫画を読んでいろんなことを勉強したし、元気にもなった。ほんとうに漫画にもらったものがいっぱいあったので、自分もそういうふうに読者の人に思ってもらえるものが描けたらいいな」

 そんなひたむきな思いを今も漫画で表現し続ける安野モヨコ。多くの人を惹きつける作品を日々描き続ける彼女は、繊細で美しくエネルギッシュな魅力に満ちていた。なお、会場はすべて撮影が可能。ぜひカメラを持って駆けつけてほしい。

■展覧会概要
・安野モヨコ展「STRIP!」PORTFOLIO 1996-2016
会期:開催中~9月26日
時間:10:00~21:00 ※最終日は18:00閉場。入場は閉場の30分前まで。
場所:パルコミュージアム
東京都豊島区南池袋1-28-2 池袋パルコ7階
入場料:一般500円、学生400円(ともに税込)小学生以下無料

■関連情報
・パルコミュージアム 公式HP:http://www.parco-art.com
・安野モヨコ 公式HP:http://annomoyoco.com/
(c)MODE PRESS