【8月31日 AFP】全米オープンテニス(US Open Tennis Championships 2016)は30日、女子シングルス1回戦が行われ、昨季は訴訟にまで発展した脳振とう問題で途中棄権に終わったユージェニー・ブシャール(Eugenie Bouchard、カナダ)が大会に戻ってきたものの、1回戦敗退と長く舞台にとどまることはできなかった。

 カテリーナ・シニアコバ(Katerina Siniakova、チェコ)と対戦したブシャールは、3-6、6-3、2-6で敗戦。昨季の4回戦進出を上回る結果を残すことはできなかった。

 昨年の全米で、ブシャールは暗い理学療法室で足を滑らせて頭を打ち、やむなく大会からの途中棄権を強いられた。そしてそのときに起こした脳振とうの影響で、その後ままならないシーズンを過ごした。

 ブシャールは、床に「滑りやすく、得体のしれない危険な物質」がこぼれていたとして、全米テニス協会(USTA)を提訴している。今大会の前には、協会が訴訟を「滞らせている」という弁護士の言葉がニュースになると、USTAが「誠に残念ながら、1年が経つ今も、ジーニーの関心は最高のプレーより事件の方にあるようだ」とやり返す一幕もあった。

 ブシャールは、「もちろん、ここへ戻ってきたことには複雑な思いがありました。去年のことを考えないわけにはいきませんが、ここに来てからは、明るい面に集中していたつもりです」と話した。

 そして、自身が訴えている相手の主催大会に出場する違和感を認めつつ、「よく考えれば確かに変な状況ですが、今は頭の片隅にあるだけで、毎日考えてるわけじゃありません」と続けた。

 それでもブシャールは、脳振とうからの復帰が「とても難しかった。あれで私の1年は終わり、その後はとてもつらい2か月を過ごしました」と話している。

 負傷自体については、年明けには回復したと感じているようだが、精神的な影響はそれよりも長く尾を引き、プレーや試合に臨む自信をむしばんでいる。そしてこの日の敗戦で、その自信はさらにしぼんでしまったかもしれない。

「あまりいいプレーができなかったと感じています。コートでもっと気持ちよくプレーして、いいサーブを打てたらよかったけど…正直なところ、今日は相手の方がいいプレーをしていました」

 2014年にはウィンブルドン選手権(The Championships Wimbledon 2014)で決勝進出、世界ランキングも自身最高の5位まで上昇と飛躍を果たしたブシャールだが、翌年からはスランプに苦しみ、ランキングも現在は39位まで落ち込んでいる。(c)AFP/Rebecca BRYAN