【8月19日 AFP】ある種の鳥は、まるで人間の親たちが妊娠中の母親のおなかに語りかけるように、ふ化する前の自分の卵にさえずりかける習性があるとの研究報告が18日、発表された。卵からかえるひなに外の世界の気温上昇への備えをさせることが、その理由として考えられるという。

 米科学誌サイエンス(Science)に発表された今回の研究では、キンカチョウの奇妙な習性を調査した。キンカチョウは抱卵期間の終わり近く、特に気温が26度を上回る暑さになると自分の卵に向かってさえずりかける。

 卵は親鳥が上に座って温めている間は外部の気温には影響を受けず、一定温度の37度に保たれる。親鳥は一体何を伝えたいのだろうか。外部の気温と関係があることなのだろうか。

 このさえずり声が卵にどのような影響を及ぼしている可能性があるかを調べるため、オーストラリア・ディーキン大学(Deakin University)のミレーヌ・マリエット(Mylene Mariette)氏とキャサリン・ブキャナン(Katherine Buchanan)氏の研究チームはキンカチョウの鳴き声を録音し、それを孵卵器(ふらんき)の中の卵に向けて再生する実験を行った。

 一部の卵には成鳥のキンカチョウが普段交わし合う鳴き声を再生した一方、別の卵には、気温が上昇した時に抱卵中の親鳥がふ化する前の自分の卵にさえずりかける時の鳴き声を聞かせた。

 暑さを知らせるこの鳴き声、いわゆる「ホットコール」を聞かせた卵は、そうでないものに比べて成長のペースが遅く、ふ化したひなも体が小さかった。

 小さい体で生まれると暑い気候の中で体を冷やすのが容易になるため、生存する上で有利になると考えられる。

 研究チームによる長期の追跡調査の結果、ふ化する前にホットコールを聞かされていた鳥はそうでなかった鳥より暑い気候が続く間に多くの子孫を残したことが分かった。

 ホットコールは卵の中のひなの成長に何らかの影響を与えていると研究チームは考えている。この知らせが伝えられるタイミングが、ひなの体温調節系の発達が始まる抱卵期間の最後の3分の1に相当するからだ。

「キンカチョウの親鳥は、ふ化する前のひなに周辺環境の気温が高いことを音響信号で伝えることで、子孫の発達過程をあらかじめプログラムしている可能性がある」と論文は説明している。

 このような戦略が他の動物にもあることが判明すれば、生物の地球温暖化への適応を助けるこれまで知られていなかった生存メカニズムの存在が示唆されると研究チームは指摘している。(c)AFP