【8月2日 AFP】米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏と、イラクで戦死したイスラム教徒の米兵の両親との間で続く非難合戦は1日も激しさを増し、選挙戦を揺るがす問題に発展している。トランプ氏の発言に対しては退役軍人団体が猛反発。批判の声は、戦没者の遺族らやバラク・オバマ(Barack Obama)大統領、さらには共和党内からも上がっている。

 発端は先月28日、民主党全国大会で演説したパキスタン系移民のキズル・カーン(Khizr Khan)さんが、イラクへ派遣された際に死亡した息子のフマユーン・カーン(Humayun Khan)陸軍大尉について語った上で、トランプ氏は国のために「何一つ犠牲にしていない」と批判したことだった。

 これに対しトランプ氏は30日、米ABCテレビの報道番組「ディス・ウィーク(This Week)」に出演し、自分も「たくさんの犠牲を払ってきた」と主張。カーンさんと共に登壇したものの演説はしなかった妻ガザラ(Ghazala Khan)さんについて、発言を禁じられていたのだろうとの見方を示した。

 トランプ氏は今月1日のツイッター(Twitter)投稿でもさらに、「カーン氏は私のことも知らないのに、民主党全国大会の壇上で意地悪く私を攻撃した上、今度はテレビに出て同じことをやっている──大したものだ!」との批判を展開した。

 この問題はメディアも連日大々的に取り上げ、トランプ氏と民主党候補のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)氏との一騎打ちとなる今年の大統領選の火種となっている。

 カーン大尉以外に戦死した兵士23人の遺族らは公開書簡で、トランプ氏の発言は「不快で個人攻撃的」かつ「非アメリカ的」と非難し、カーン家を含むすべての戦没者遺族に対する謝罪を要求。

 また米国最大の退役軍人団体である海外戦争退役軍人協会(VFW)は、戦死者の母親に対する「度を超えた」批判を非難。ブライアン・ダフィー(Brian Duffy)VFW理事長は、「大統領選挙の年であろうとなかろうと、VFWは、戦死者の遺族による言論や表現の自由の権利行使を批判する者を容認しない」と述べた。

■共和党内からも非難集中

 米政界では戦死者の遺族批判はタブーとされており、カーン夫妻に対し敵意を示し続けているトランプ氏の肩を持つ共和党の重鎮はほとんどいない。

 過去にベトナム戦争で捕虜になった経験をトランプ氏にやゆされていたジョン・マケイン(John McCain)上院議員は長文の声明を出し、「私がトランプ氏の発言にどれほど強い反感を抱いているかは、どれだけ強調しても足りない」と憤りを示した。

 またオバマ大統領も、障害を負った退役軍人らとの会合で、米国の軍や兵士を「こき下ろす」一部の人々にはうんざりしており、「戦没者の遺族ほどわれわれの自由と安全のため犠牲を払ったものはいない」と述べ、トランプ氏を暗に非難した。(c)AFP/Michael Mathes