【7月31日 AFP】ロシアの組織的なドーピングを内部告発したビタリー・ステパノフ(Vitaly Stepanov)氏が30日、リオデジャネイロ五輪は「クリーンではない」との見解を示し、ロシア選手の出場を全面禁止にしなかった国際オリンピック委員会(IOC)を批判した。

  陸上女子800メートルの選手で妻のユリア・ステパノワ(Yuliya Stepanova、旧姓:リサノワ〈Rusanova〉)とともに、ロシアにまん延しているドーピングの実態を知るビタリー氏は、薬物使用の取り締まりが強化されているにもかかわらず、来月5日に開幕するリオ五輪では不正行為者が現れるだろうと主張した。

 地元紙エスタド・ジ・サンパウロ(O Estado de Sao Paulo)のインタビューに応じたビタリー氏は「五輪では常につきまとう問題だ。五輪は絶対にクリーンにはならないし、リオがクリーンだと思える根拠がない」と話しており、「残念ではあるが、ドーピングを行った選手は大会に紛れ込んでいる」と語った。

  2014年にドイツのドキュメンタリー番組でロシアのドーピングスキャンダルを明らかにした露反ドーピング機関(RUSADA)の元職員である ビタリー氏は現在、妻のステパノワとともに米国で身を隠して暮らしている。

 国際陸上連盟(IAAF)は、ロシア選手のリオ五輪を含めた国際大会出場を全面的に禁止しているが、ロシアのさらなるドーピング問題の発覚後、IOCは全面禁止ではなく、ロシア選手の大会出場を各競技連盟の決定に委ねていた。IOCはまた、ステパノワのリオ五輪出場を認めなかった一方で、夫妻を賓客として大会に招待している。

 2010年に世界反ドーピング機関(WADA)へ最初の情報を提供しているビタリー氏は、IOCの決定を予期していたと明かし、「彼らがドーピングや不正を告発した人物をサポートすることはない。組織が機能不全になる可能性があるから、彼らは密告者を恐れている」と語った。

「IOCは真実を求めていないし、そもそもまったく興味がないんだ。私たちは高潔な五輪のスポーツで不正が行われた証拠を持っているが、彼らは知ろうとはしない」

 ビタリー氏はまた、ロシアの全面的な出場禁止を撤回したIOCの決定は、「ドーピングをゼロにするためではなく、倫理的な問題だ」としている。

「彼らはすべて順調で、すべて内密に行われるべきだということを世界に示したいんだ。問題発覚は損失につながるから、ネガティブなことは隠ぺいする。IOCが守りたいのは五輪の価値ではなく、お金だ」

(c)AFP