【6月16日 AFP】世界反ドーピング機関(WADA)は15日、ロシアのスポーツ選手に対する薬物検査で、今年に入り700回以上の妨害があったとする報告書を発表した。

 ロシア陸上選手のリオデジャネイロ五輪の出場可否を判断する、国際陸上連盟(IAAF)の会合をわずか数日後に控えたこの日、WADAから衝撃的な報告書が提出された。

 23ページに及ぶ概要によると、今年2月15日から5月29日に試みた薬物検査のうち、736回が、検体の回収や選手の所在などさまざまな事情を理由により拒否、あるいは中止になっていたという。

 また報告書には、軍事都市(秘密都市)へ薬物検査に向かった検査官に対して、武装した政府職員が国外追放をほのめかすなどの威嚇があったとも書かれている。軍事都市は出入りに制限があるため、選手の中にもそこに居住して薬物検査を逃れようとする者が多いという。

 別のページには、ある女性陸上選手が、体内に挿入した容器を使って尿検査をごまかそうとした例についても詳細に記載されている。

 報告書によれば、「選手は容器を使おうとしたが、回収カップに入らず床にこぼれた」という。選手は容器を捨て、さらに検査官を懐柔しようとしたとも記載されている。

 ある陸上競技大会での妨害の実態についても記されている。ある選手は、シャペロン(薬物検査の対象になったことを選手に通告し、検査中に付き添うスタッフ)監督下での検査を逃れようと、ミックスゾーンから逃走。別の選手は競技中にスタジアムから消え、そのまま行方がわからなくなったという。

 そして、2月27に行われた競歩の国内選手権では、15人の選手が、不可解なことに棄権や失格となり、スタートラインに姿を見せなかったという。(c)AFP