【5月18日 AFP】中国とインドでは人口の3分の1以上に精神上の問題があるにもかかわらず、そのうち医療支援を受けている人々はほんのわずかだと、18日に発表された研究が指摘している。

 人口ランキングで1位と2位の両国で、精神的および神経学的問題がある人や薬物・アルコールなどの乱用・依存問題のある人の数は、高所得国すべてを合わせた該当人数よりも多いという。

 この傾向は今後数十年でさらに深刻化する見通しで、特にインドでは、2025年まで増加の一途をたどるとの予想だ。一方、中国は35年以上前に導入された厳格な産児制限政策による影響の一つとして、人口の高齢化が進むとともに認知症の急増が問題となっている。

 そうした中、どちらの国もメンタルヘルスのニーズに対して適切に対処する体制が整っていないことを3件の研究報告が指摘した。これらの報告は「中国インド精神衛生連盟(China-India Mental Health Alliance)」の発足を記念して、英医学誌ランセット(The Lancet)とその精神医学専門誌ランセット・サイキアトリー(Lancet Psychiatry)に掲載された。

 中国では、抑うつや不安障害、あるいはアルコールなどの物質乱用・依存、認知症といったよくみられる精神上の問題のある人のうち、医者にかかろうとする人はわずか6%しかいないという。特に「地方部ではメンタルヘルスケアに関わる人材の不足が著しい」と、論文の主著者の一人で上海交通大学(Shanghai Jiao Tong University)のマイケル・フィリップス(Michael Phillips)教授は説明する。

 また中国では、統合失調症などより深刻な精神障害のある人の半数以上の診断が放置され、よってケアも受けていないという。インドでも必要なケアを受けていない人の割合は同様で、これは富裕国の患者の受診率が70%を超えていることとは対照的だ。

 新興大国の両国と先進国の違いは、メンタルヘルスケアへの支出額でも同様に鮮明で、両国の医療関連の国家予算のうち、メンタルヘルスに充てられる予算の割合はそれぞれ1%に満たない。米国では同6%近く、ドイツ、フランスでは同10%以上に上るという。

 中国とインドの医療制度でこの差が埋まるには、あと数十年かかる見通しだという。ただし、インドのヨガや中国の伝統薬など、数多くの伝統療法専門家らを、メンタルヘルス上の問題を把握・治療できるよう訓練することは可能と示唆している。(c)AFP