【3月29日 AFP】ブラックホールを研究するために打ち上げられた総費用2.5億ドル(約280億円)の日本の人工衛星の行方がわからなくなり、宇宙科学者らが数十人がかりで大空を懸命に捜索している。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、今頃は軌道上から活発に通信を行っているはずだった超高性能X線天文衛星「ひとみ(Hitomi)」は現在、その位置を正確に特定できない状態に陥っているという。

 ひとみは、地上管制チームと交信したのは短時間だけで、それ以降は行方不明になっている。米国の研究者らからは、同衛星が数個の破片に砕けた可能性があるとの報告が寄せられている。

 JAXAの宇宙科学研究所(Institute of Space and Astronautical Science)の常田佐久(Saku Tsuneta)所長は、27日の記者会見で「大変深刻な事態と受け止めている」と述べた。

 広報担当者は「ひとみがどこにあるかについては、おおよそ把握している」と付け加えたが、科学者らは今も、衛星の正確な位置の割り出しを試みている。

 JAXAが米航空宇宙局(NASA)や研究機関などと共同開発し、2月17日に打ち上げた天文衛星ひとみは、ブラックホールや銀河団から放射されるX線の観測を目的としている。

 直接的に観測されたことはこれまでに一度もないブラックホールは、崩壊した巨大な恒星であり、その引力が非常に強力であるため、そこからは何も脱出できないと科学者らは考えている。

 先月、世界初の重力波検出が発表され、その発生源が巨大ブラックホール2個の衝突であることが判明したことにより、ブラックホールの存在に関する証拠が新たに追加された。

 打ち上げコストを含む総費用が310億円に上るこの行方不明の衛星は、高度約580キロの軌道を回る予定だった。(c)AFP