【3月28日 AFP】インド・ムンバイ(Mumbai)の芸術大学の裏手に広がる林の中に、かつては立派だったが今では荒れ果てた家がひっそりと残っている。小説「ジャングル・ブック(The Jungle Book)」や「少年キム(Kim)」で有名な英国の作家、ラドヤード・キプリング(Rudyard Kipling)の生家だ。

 木材と石を組み合わせたこの家が建てられたのは、キプリングの生誕から17年後の1882年。現在は半ば茂みに覆われ、緑色の塗装ははげている。周りには枯れ枝が積もり、いすが放置され、ウイスキーの空瓶まで散乱している。庭に立つ作家自身の胸像も鳥のふんで汚れ放題だ。

「家の状態は劣悪で、喉から手が出るほど支援を必要としている」。サー・J・J建築大学(Sir JJ college of Architecture)のラジブ・ミシュラ(Rajiv Mishra)学長は窮状をそう説明する。

 建物はキプリングの父、ジョン・ロックウッド・キプリング(John Lockwood Kipling)が初代校長を務めたサー・J・J芸術校(Sir J.J. School of Art)の敷地内にあり、同氏をはじめ歴代校長の住居として2000年代初頭まで使用された。しかし、そのころにはすでに朽ち果てており、住める状態ではなくなっていたという。

 ミシュラ氏によると、当局はこの家を学生や芸術家の作品を展示するギャラリーとして再活用する方針で、事業の入札を募っている。修復計画をめぐっては大学側と政府側の間で何年も折り合いがつかなかったが、同氏は年内の修復作業開始に期待を寄せている。(c)AFP/Peter HUTCHISON