【3月23日 AFP】国際自動車連盟(FIA)のマックス・モズレー(Max Mosley)元会長は22日、数十年前であれば、オーストラリアGP(Australian Grand Prix 2016)でマクラーレン・ホンダ(McLaren-Honda)のフェルナンド・アロンソ(Fernando Alonso)が起こしたようなクラッシュは、死亡事故につながっていたと話した。

 アロンソは、時速300キロを超えるスピードで走っていたところ、ハース(Haas)のエステバン・グティエレス(Esteban Gutierrez)と接触し、コース脇に突っ込んだ。それでもアロンソは、辛うじて原形をとどめたマシンから脱出し、一命をとりとめた。

 往年の名選手アイルトン・セナ(Ayrton Senna)氏が、1994年のサンマリノGP(San Marino Grand Prix)で命を落としてから、レースにおける安全基準は格段に厳しくなり、一昨年の日本GP(Japan Grand Prix 2014)でジュール・ビアンキ(Jules Bianchi)氏がクラッシュにより亡くなるまで、フォーミュラワン(F1、F1世界選手権)では死亡事故が発生していなかった。

 20年前に同様の事故に遭っていたら、アロンソは生きていただろうかと聞かれたモズレー氏は、英紙に対し「そうはなっていなかっただろう」と話した。

「詳細を分析しないことには断言できないが、普通に考えれば、あのような事故は重傷、もしくは死につながっていたはずだ」

「ありがたいことに、そういう可能性はなくなりつつあるようだ。ジュールの事故など、今でも危ないことは間違いないが、レース中に事故があったとしても、ドライバーが自力でマシンから脱出するのが当たり前になっている。20年前には考えられなかった」

「これも(F1ドクターの)シド・ワトキンス(Sid Watkins)氏や、有能なスタッフを擁するチームのおかげだ」

「(医療チームには)科学的な見方が必要になった。1994年に伊イモーラ(Imola)でアイルトン・セナが命を落としてから、劇的に変わったことだ」

「アロンソが自力でマシンを出たのを見て安心した。自分の仕事が結果を残していることに、満足もしている。そういう意味でも、すごいクラッシュだった」

 モズレー氏は、FIAの会長を務めた1993年から2009年の間、今日まで続くF1の安全改革の中心にいた。その流れは、コックピットでドライバーの頭部を守る安全装置「Halo」の導入にも影響している。(c)AFP