【2月17日 AFP】パキスタンの研究チームは、同国パンジャブ(Punjab)州で、110万年前のステゴドンの牙を見つけたと発表した。この哺乳動物がたどった進化の旅路の解明に新たな手掛かりをもたらす可能性のある発見だという。

 現代のゾウの遠い親戚に当たる種のステゴドンは、約1100万年前に現れ、約1万1700年前の最終氷期の終わりまで続いた後期更新世まで、地上に存在したと考えられている。

 研究チームによると、発掘された牙は全長約2.4メートル、直径が約20センチで、同国内でこれまでに発見された中で最大のものだという。

 パキスタン・パンジャブ大学(University of Punjab)の広報担当、クラム・シャザド(Khurram Shahzad)氏によると、牙は、ジェーラム(Jhelum)地区で調査を行っていた同大動物学部の研究チームが発見したのだという。

 今回の調査を率いたムハンマド・アクタル(Muhammad Akhtar)教授は、AFPの取材に「この動物が生息していた当時の環境がどのようになっていたかに関する手掛かりが得られる」と語った。

 牙の発見について、古代哺乳類に関する広範囲の研究を行っている豪ウロンゴング大学(University of Wollongong)の古生物学者、ゲリット・ファン・デン・ベルフ(Gerrit van den Bergh)氏は、「完全な牙が見つかったとすれば、それはまさに特別なこと。極めて希少だ」と話す。その一方で、化石の年代測定を含めてさらに詳細な検証を行う必要があるだろうと注意を促している。

 アクタル教授によると、牙の化石は後期更新世の時代のもので、この年代は、ウラン・鉛放射年代測定法を用いて特定されたという。

 ステゴドンは、ほぼ真っすぐな長い牙と、歯冠が低くて上部がとがった歯を持つ。これは、ステゴドンが森林環境で、木の葉や果実だけ、もしくはそれらと地面の草をどちらも食べていたことを示している。対照的に、マンモスやゾウは、歯冠が高く上部が平らな臼歯を持つため、地面の草を主食にすることができた。

 またステゴドンは泳ぎに優れており、原産地のアフリカから、アジアにまで急速に生息地を拡大したと考えられている。これまでにステゴドンの化石の大半が見つかっているのはアジア地域だ。

 この哺乳動物についてファン・デン・ベルフ氏は、「120万年前頃はまだ繁栄していた」と指摘。「大半はアジア種だが、化石はアジアを遠く離れた場所でも見つかっている。最近では、臼歯のかけらがギリシャで発見された」と続けた。

 ステゴドン種の絶滅は、現生人類の登場と時期が重なっているが、人類がステゴドンを狩猟していたと断定するのは難しいと同氏は付け加えた。(c)AFP